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「誰に対しての悪かによるんじゃないか」
「そっか」
この国にとって悪とされていた魔王だって、魔王からすれば家族を、そして思い出の家を守りたいだけだったのかもしれない。
もしかすれば、彼を召喚しそして処理する事を決定した偉い人にだって、彼らには彼らなりの正義があったのかもしれない。
「この世界に、魔王なんていなかったね」
いたのは魔王と呼ばれただけの、家族を喪い悲しんでいただけの哀しき人。
「この事は、どう伝えられるおつもりですか?」
後ろに立っていたベルザックにそう聞かれ、隣のフランを見上げるが、フランは何も言わず頷くだけ。
“私に委ねてくれてるのかな”
思えば最初はあんなに仲が悪かったのに、親しくなったものだと笑いが込み上げる。
それと同時に堪らなく泣きたくもなった。
「……魔王はいたって報告する。討伐したけど、浄化は必要。だから聖女以外立入禁止にする」
ただ討伐したと報告すれば、必ず国の手が入る。
けれど私は、誰にも彼とコルネリアさんの思い出の場所に足を踏み入れて欲しくないと思いそう答えた。
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