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ナポレオン
いきなりボクのスマホが勝手に起動した。
『やァ、ノア。久しぶりだな!』
スピーカーから屈託のない少年の声が響いた。
着信画面には青い髪の美少年が微笑んだ。
イタズラっ子みたいに笑っていた。
ヤケに楽しげだ。
「ううゥッナポレオン?」
ボクは小さくうめき声を上げてスマホの着信画面に映った美少年を見つめた。
年齢はボクよりもいくらか年下だろう。
詳しくは知らないが小学校五年生くらいだ。
アイドルみたいな美少年で肌が抜けるように白い。
仕方がないかもしれない。
彼は俗に言うアルビノという皮膚疾患で、少しでも紫外線に当たると火傷をしたように爛れてしまうらしい。
アルビノの平均寿命は三十歳だと言われていた。できるだけ紫外線に当たらないことが寿命を伸ばす秘訣になる。
そのため彼は日中、決して外へ出ない。
生まれてからずっと地下のシェルターで引きこもり生活を送っていた。
初めて彼の画像を見た時は、あまりにも可愛らしいので女の子かと思ってドキドキした。
まだ変声期前なのだろう。甲高くボーイソプラノだ。
断わっておくがボクは流行りのBLには興味がない。
いたってノーマルだ。
彼は抜けるように肌が白い。おそらく一度も陽に焼けたことのないのだろう。真っ白な肌をしていた。
『どうだい。暇つぶしにボクと極上のミステリーツアーに出掛けないか。ノア?』
相変わらずナポレオンは年下のくせにタメ口だ。
こっちのスケジュールなど一切考えない。
「はァ……」
だが彼にはいろいろと借りがあるので強く反論できない。
彼の名前はナポレオン。
その名の通り彼の辞書には『不可能と解けない謎はない』。
いわゆる天才だ。
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