ナポレオン

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ナポレオン

 このスマホもナポレオンに送ってもらったものだ。  連絡は主に向こうからきた。  スマホ代はナポレオンの方で払ってくれるので重宝していた。  何しろナポレオンの実家、龍宮寺家は日本有数の財閥で総資産は天文学的だとだ。  我が家のような一般庶民からすれば羨ましい限りだ。    彼はこれまでいくつもの難事件を解決したが、そのうちのひとつの事件を紹介しよう。  あまりにも意外な真相だったので、未だに信じられないほどだ。  しかもナポレオンはほんの一曲、さわりだけ歌って事件を解決したのだ。    まさに『十秒探偵』と言っても過言ではない。  またたく間に解決だ。  その犯人消失事件は、神奈川県警の石動(イスルギ)リオ警部補が持ち込んだ。  その前に自己紹介をしておこう。  ボクの名前は大和ノア。  山羊座で血液型はAB型だ。  性格はいたっておとなしく真面目でアイドルとアニメをこよなく愛すヲタだ。  地元の小学校へ通っていた。  六年生だ。    もうすぐ夏休みになる。  彼女は下校途中、ボクの前に真っ赤なポルシェをブレーキ音を響かせて停車させた。  一斉に、通行人たちは足を止め赤いポルシェを振り返った。 「ううゥ……!」ボクはかすかにうめき声を上げた。  まったくなんて派手な車を運転しているのだろう。    ゆっくりとドアが開いた。  やっぱり彼女だ。 「……」周りの通行人も何事かと興味津々だ。  降りて来たのは美人警部補の石動(イスルギ)リオだった。  一瞬、ドラマか何かの撮影かと思ったくらいだ。  あまりにも美しい。若手の美人女優にもひけはとらないだろう。 「よォ、ノア。少し見ないうちに大きくなったなァ」  まるで田舎のオバさんのような挨拶だ。 「はァ……」
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