6人が本棚に入れています
本棚に追加
犯行現場
事件は三日前、白昼堂々と起きた。
その日は朝から真夏を思わせるほど日差しが強く妙齢の高遠雅は、いつものように日傘を差していた。
しかし駅前の小さな路地に差し掛かり日傘を閉じて路地を通った際、いきなり背後から何者かに襲われコンクリート片を頭に叩きつけられたようだ。
悲鳴を聞きつけ、第一発見者の自称ビジュアル系ミュージシャンの城ダンが路地の中ほどに倒れている高遠雅を発見したらしい。
すぐに彼は被害者に駆け寄って救急車を呼んだそうだ。
だがその時、第一発見者は犯人らしき者は見ていないと証言していた。
一方、被害者の高遠雅は救急搬送されたが、すぐに意識を取り戻した。
幸い命には別状はなかったようだ。
その後、彼女は退院し自宅療養中らしい。
警察も白昼の事件で真犯人を取り押さえる事が出来なければ威信に関わるだろう。
ボクたちはリオの赤いポルシェで犯行現場まで足を伸ばした。
駅前の犯行現場では容疑者立ち会いによる実況見分が行われていた。
容疑者は第一発見者の城ダンだ。
警察は容疑者の城ダンが第一発見者を装って資産家の高遠雅を襲い、金品を奪おうとしたと考えているようだ。
その後、調べた結果、城ダンにはかなりの借金があり動機は妙齢の女性を狙ったモノ盗りだと考えられた。
なるほど第一発見者が真犯人ならば犯人が消失したと言うのも偽証だったのだろう。
怖モテの鰐口警部補が執拗に容疑者の城ダンに事情を訊いていた。
「おい、城。お前は借金で首が回らなかったんだろう。そこでセレブの高遠さんを見かけた。お前は路地まで追いかけて、コンクリート片で殴りつけ気絶させ、バッグを奪い取ろうとした」
「そ、そんなことしてないよ」
「だが悲鳴を聞きつけて野次馬が集まってきたので、とっさに第一発見者を装った。どうだ、違うか?」
ネチネチと真綿で首を絞めるように問い詰めた。
「ち、違うよ。なに言ってんだ。オレは第一発見者だぜ。オレが自作自演したっていうのか?」
容疑者の城は売れないビジュアル系ミュージシャンらしい。かなりくたびれた様子だ。
真っ赤なモヒカンがヤケに目立った。
最初のコメントを投稿しよう!