ナポレオン

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ナポレオン

「フフゥン、お前が第一発見者を装ったと考えるのが、もっとも理に叶っているだろう。お前が真犯人なら事件後、路地から犯人が消えたトリックも合点がいく!」 「はァ、どうしてだよ。オレは路地から女性の悲鳴がしたんで、慌てて路地へ駆け込んだんだ。あのオバさんを背後からつけ狙って、コンクリート片で殴りつけてなんかいない。オレは第一発見者なんだァーーー!」  城ダンは必死に反論していた。 「フフゥン、知らないのか?」    しかし鰐口警部補は不気味な笑みを絶やさない。 「な、なにがだよ?」 「断わっておくが警察にとって第一発見者が最も有力な容疑者なんだぜ」 「えェ、そうなのか?」  どうやら容疑者の城は知らなかったみたいだ。 「ええ、そうね」  リオもうなずいた。  だが鰐口警部補はなおも続けた。 「真犯人がこつ然と消失したなんて話しは初めっからデタラメなんだ。お前の自作自演なんだよ。お前が真犯人だとすれば、この路地からこつ然と加害者が消失したトリックも理屈が通るだろう」  今度は優しい口調で(さと)した。  アメとムチなのだろう。 「ち、違うって。オレは悲鳴を聞きつけて路地へ駆け込んだんだ。その時は真犯人はどこにもいなかったんだ!」  容疑者の城ダンも言い訳に懸命だ。  しかしこのままでは彼が真犯人にされるだろう。 『待ってくれ』  その時、ナポレオンの声がスピーカーから響いた。 「はァ、なんだ。お前は?」  (コワ)モテの鰐口警部補が僕らを睨んだ。 「鰐口(ワニ)さん。悪いけど、今からこの犯人消失事件はナポレオンが解いてくれるわ」  石動リオは、自慢げに胸を張ってみせた。 「なにィ。ナポレオンだとォ……?」  鰐口警部補は聞き返した。 『ええェ、すべての謎はこのボク、ナポレオンに解かれたがっているんですよ』  青い髪の美少年は自信満々に応えた。 「ううゥ……、誰かは知らないけど。助けてくれよ。オレは犯人じゃないんだ。オレはやってないんだ!」  真っ赤なモヒカンの城ダンはボクたちに泣きついてきた。流石に哀れな気がした。 『ええ、任してください。すでにこの事件の真犯人はわかっています』  ナポレオンは笑顔を浮かべたままうなずいた。 「なにィ、マジか?」  ボクも(にわか)には信じられない。  だが、鰐口警部補はリモート画面のナポレオンを睨みつけていた。 「はァふざけるな。なんだ。小学生のミステリー小説の感想文の発表会じゃねえェんだよ」
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