ナポレオン

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ナポレオン

「頼むよ。オレじゃないんだ。マジでオレが現場に駆け込んだ時は、あのオバさんはコンクリート片で殴られて倒れてたんだよ」  容疑者の城ダンは必死にナポレオンに泣きついた。  背に腹は変えられないのだろう。もはやプライドもかなぐり捨てたみたいだ。 『ええェ、安心してください。間違いなく城ダンは真犯人ではありません』  ナポレオンは笑顔で断言した。  余裕のコメントだ。  まったく(コワ)モテの鰐口警部補を怖がっていないようだ。 「おいおい、リオ。父兄参加日じゃねえェんだよ。オレたちは小学生のお守りをするほど暇じゃないんだ」  鰐口警部補はバカにするようにボクたちを(あざけ)り笑った。 「ええ、私もナポレオンをお守りをしてるつもりはないわ」  しかし石動リオも負けてはいない。  笑みを浮かべたまま対抗した。 『やはり犯行現場を確認して真相がわかったよ』  ナポレオンは確信したみたいだ。 「おいおい、夏休みの読書感想文を発表するワケじゃないんだから。ひと目見て事件の真相がわかるはずないだろうが。坊やはとっとと帰ってスマホゲームでもして遊んでろよ!」  鰐口警部補は苦笑し首を左右に振った。  まったく相手にしていないようだ。 『フフゥン、この『ナポレオンの辞書に不可能と解けない謎はない』んだよ!』 「なにィ!」 『じゃァ、悪いけど一曲歌わしてもらうよ』  不意にナポレオンは歌う準備をした。 「はァ、一曲。なに言ってんだよ。この坊やは?」  鰐口警部補は呆れた顔で聞き返した。 「ううゥ……」  ボクも心配になってきた。  何をする気なんだろうか。  容疑者の城ダンも困惑ぎみだ。  しかしボクたちの心配を他所(よそ)にナポレオンは笑みを浮かべ歌い始めた。 『カァラァス、なぜ鳴くの……♪』  
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