6人が本棚に入れています
本棚に追加
ナポレオン
「頼むよ。オレじゃないんだ。マジでオレが現場に駆け込んだ時は、あのオバさんはコンクリート片で殴られて倒れてたんだよ」
容疑者の城ダンは必死にナポレオンに泣きついた。
背に腹は変えられないのだろう。もはやプライドもかなぐり捨てたみたいだ。
『ええェ、安心してください。間違いなく城ダンは真犯人ではありません』
ナポレオンは笑顔で断言した。
余裕のコメントだ。
まったく怖モテの鰐口警部補を怖がっていないようだ。
「おいおい、リオ。父兄参加日じゃねえェんだよ。オレたちは小学生のお守りをするほど暇じゃないんだ」
鰐口警部補はバカにするようにボクたちを嘲り笑った。
「ええ、私もナポレオンをお守りをしてるつもりはないわ」
しかし石動リオも負けてはいない。
笑みを浮かべたまま対抗した。
『やはり犯行現場を確認して真相がわかったよ』
ナポレオンは確信したみたいだ。
「おいおい、夏休みの読書感想文を発表するワケじゃないんだから。ひと目見て事件の真相がわかるはずないだろうが。坊やはとっとと帰ってスマホゲームでもして遊んでろよ!」
鰐口警部補は苦笑し首を左右に振った。
まったく相手にしていないようだ。
『フフゥン、この『ナポレオンの辞書に不可能と解けない謎はない』んだよ!』
「なにィ!」
『じゃァ、悪いけど一曲歌わしてもらうよ』
不意にナポレオンは歌う準備をした。
「はァ、一曲。なに言ってんだよ。この坊やは?」
鰐口警部補は呆れた顔で聞き返した。
「ううゥ……」
ボクも心配になってきた。
何をする気なんだろうか。
容疑者の城ダンも困惑ぎみだ。
しかしボクたちの心配を他所にナポレオンは笑みを浮かべ歌い始めた。
『カァラァス、なぜ鳴くの……♪』
最初のコメントを投稿しよう!