エイプリル・フールという名の……

2/3
前へ
/5ページ
次へ
「ーーあなた、誰?」  即声の主の方へ振り向く、優香。  玄関も閉められている、たった一人しかいない賃貸アパート部屋。  にも関わらず、突如現れた銅色の短髪ヘアーの人物。鋭い目つきで、こちらを見据えている。 (こ、コイツ……何処から聞いていたッ!?ーーチッ!どうする!?記憶を消去するのに上から許可を得ないと……)  優香の中で、警戒心が更に高まる。  この張り詰めた空気が、重く、重くのりかかる。 「そんなに警戒しなくて良いよ。ーーというか、アンタ人間じゃねぇだろ?」 「ーーッ!?な……何を言ってんの?酷いわ!いきなり、初対面の人にそんな事を……」 (シラを切って、この場を乗り切るしかないッーー!!) 「オレさ。今、茶番に付き合う程時間が無いから。単刀直入に言う、オレは【虎徹 弁天】。この世界で厄除師十二支 〈虎〉の本家の者だ。此処に住んでいる後輩が、勤務時間になっても職場に来ないから迎えに来た」 「……あぁ。あんた、厄除師なの?だったら話が早いわ。答えは、お断りよ。帰りなさい、人間。コレはあんた達の管轄外よ」 「ーー頼む!ソイツが何をしたのか分からないけど、悪い事をしたツケならオレが支払うから。どうか、ーーッお願いだ!!」 「ちょっと、頭を下げられても困るわ!……誤解しているようだけど、此処のボウヤは悪行をしていない。私は、上司……天界の菩薩から命令でエイプリル・フール限定で〈人間選別〉をしただけよ〜」 「……は?人間選別??」 「そうよ。まぁ……、最初は暇つぶしだったのよ。人間に化けてエイプリル・フールを流行らせたら人間達は、どんな事をするのだろうっていう実験だった。それが天界の従業員の間でブームになっちゃって……」 「……それで?」 「それを知った上司が、『最近、人間が寿命が、伸び増え過ぎている現状なんだよね。欲まみれになっている人間を、閻魔側の従業員とシフトを組んで減らしましょう(営業しましょう)』って話しになったの」 「……?ちょっと、待って!それと今回のエイプリル・フールと、どう関係があるんだ!?」 「……まだ、話しに続きがあるのよ。せっかちね、厄除師のボウヤ。その営業方法は、このノートで決める事。それがコレよ!」 「〈equivalent exchange〉、……【同等交価】?」  目の前に差し出されたノートを、怪訝そうに受け取る弁天。パラパラと捲ると見知った字を見つけ、内容に目を通す。  コレは益々、上戸を助けないといけないと強く思い、焦った彼女。  今でも、ペラペラと気持ち良く話している天界人にどう交渉するのか、弁天は頭をひねらした。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加