8人が本棚に入れています
本棚に追加
◇◇◇
相手の意見は、こうだ。
人間の選別方法
◯年に一回、エイプリル・フール時。
◯ノートに記載した人間→不合格(魂に戻す)
天界人の営業ルール
※営業時間 午前五時〜午前十一時
※ノートに記載させた人数によって、有給休暇日数加算か時給の増加などのボーナス制度設置
※地獄人と喧嘩、賄賂、シゴトの横取り禁止
この内容に、オレ虎徹 弁天はふと疑問に思った。
「なぁ、何でノートに記載したら不合格なんだ?」
「……ノートに嘘の願い書く=欲求の塊。菩薩は、他力本願をする人間を撤去したかった、って言えば分かる?」
「……ッ!?ちょっと、待てよ!上戸の記載した内容は、【ただアンタと幸せになりたい】って理由だぜ?他力本願にならないだろ!?」
「ーーなるのよ。ノートに書いた時点で」
「ーーッ!!……どうしたら、ソレが無くなる?」
「無理よ!あんたの後輩は、この〈栞〉になったの。安心しなさいよ。栞になっている間は、〈記載した願い〉の夢を見続けるように設定してあるから。あとは持ち帰って、コレを魂にして初期化するのよ。それに……」
凛とした発言をする、天界人。
仕事人間ならぬ仕事天界人。こういう相手は感情の訴えは通じない。目の前の手強い相手にどうしたものか、策を巡らす。
「私さ……有給休暇を使って、人間界の美味しい物を飲み食い巡りをしようって友達と約束したのよ。そして、映えスポットに行って〈heaven 〉に投稿して、フォロワからイイねをたくさん貰う計画でこれから忙しくなるのよ。だから……絶ッッ対に、無理ッッ!!」
ーー
ーーーー
うん、全言撤回。ーーコイツ仕事を舐めてやがるわ。
内心イラっとしてしまった、オレ。しかも相手はコレを、頑固として譲る気は無いという意思の表れが嫌でも伝わってくる。
(余程、人間の作る飲食が気に入ってんだな……。ん?ちょっと待てよ)
先程の脳みそお花畑天界人の発言を思い返し、ニヤリと口元が綻ぶ。
「……人間界で一番美味い飲食店、オレ知ってるんだよな」
ポツリと呟いた言葉に、相手の瞳孔が見開く。反応した様子に次の発言をする。
「コレをアンタの友人に教えたら株上がるんじゃね?」
「……何処よ?その〈一番美味しい店〉って……」
オレの発言に食いついた様子に、この賭けの勝利を得た。だが、コレはあくまでも上戸を人間に戻せる場合だ。
更に、オレは言葉を畳み掛ける。
「教えても良いけどさ……。その前に、その栞を人間に戻す事できるのか?」
「ーー何が言いたいの?厄除師」
否定しない、という事は。つまり……
「教えるかわりに、オレと取引しないか?」
【虎徹 弁天の日常一部より】
最初のコメントを投稿しよう!