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じ、っと目を見つめられて顔が火照った。人見知りのせいだ。視線を感じると、本人の意思と関係なく顔がかっと赤くなる。
渚は目線を逸らしながら店名をつぶやいた。
「Weekendsoup、店舗はありません……」
「ゴーストキッチンってことなのか?」
「……とはまた違うのですが」
「ふうん、そうか。まあいい」
一歩身を引き、距離を取ったふたりの間をスタッフが横切った。いつのまにか周りが騒がしくなっている。いよいよ本格的に、アリーナ全体の撤収作業が開始されたようだ。
「君のスープをまた飲みたいときはどうすればいい。その、メンバーから、評判がよくて」
歯切れが悪いのに、よく通る神庭の声はまっすぐに耳へ届いた。
それにしてもここまでしつこいとは。やはり、飲食店経営のコツを奪おうとしているスパイに違いない。
参考にするならば、うち以外の方が勉強になりそうだが、と渚は素っ気なく神庭をあしらった。
「……注文をいただければ、どこへでも」
「そうか」
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