1.今世

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 じ、っと目を見つめられて顔が火照った。人見知りのせいだ。視線を感じると、本人の意思と関係なく顔がかっと赤くなる。  渚は目線を逸らしながら店名をつぶやいた。 「Weekendsoup、店舗はありません……」 「ゴーストキッチンってことなのか?」 「……とはまた違うのですが」 「ふうん、そうか。まあいい」  一歩身を引き、距離を取ったふたりの間をスタッフが横切った。いつのまにか周りが騒がしくなっている。いよいよ本格的に、アリーナ全体の撤収作業が開始されたようだ。 「君のスープをまた飲みたいときはどうすればいい。その、メンバーから、評判がよくて」  歯切れが悪いのに、よく通る神庭の声はまっすぐに耳へ届いた。  それにしてもここまでしつこいとは。やはり、飲食店経営のコツを奪おうとしているスパイに違いない。  参考にするならば、うち以外の方が勉強になりそうだが、と渚は素っ気なく神庭をあしらった。 「……注文をいただければ、どこへでも」 「そうか」
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