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いきなり呼び捨てか、と思ったが同い年で同性である。騒ぎ立てるほどのことでもない、と渚は目を細めた。
スープ屋を始めて、客と握手をしたのはこれが初めてのことだった。親しくない人と話すのが特に苦手な渚だったが、神庭との会話はふしぎと胸に暖かい余韻を残した。
思わず自分の胸に手をやる。心臓はゆっくりと拍動していた。
春先も日が沈むとまだ寒さが身にこたえる。暗闇の中、ケータリングの大荷物をバンに積み込み、赤く凍える手に吐息をかけた。
Weekendsoup、週末のスープ。これは、週末のみ営業しているというわけではなく〝おつかれさま〟の意味だった。
お仕事おつかれさま、ライブおつかれさま、その人の週末にどうかこの一杯を、と渚が名付けた。
――提供される側からしたら、週末にしか会えないスープ、でもあるか。
もっと適当で分かりやすい名前にすればよかったかな、と思ったりもするが、案外この名前は嫌いじゃなかった。
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