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陛下は嬉しそうに肩を抱き寄せた。あと数刻火を入れられればより美味しいのだけれども。うーん、と小首をかしげながらナギは具の柔らかさを確認し、取り皿に一切れの芋を取り分けた。
じゃが芋に、貴重な塩蔵肉、香味野菜をじっくり煮込んだシンプルなスープは、過酷な北国カリメルンの冬を乗り切るメニューである。
厳しい冬を終え、暖かな春が来ればもっと栄養のある甘いスープを作れる。
豊富な雪解け水が大地を潤し、色鮮やかな新芽が現れるはずだ。
「そうだ。陛下、何かスープのリクエストはありますか? 今日みたいな地味なスープじゃなくって、春のおいしい食材で、陛下が召し上がられたいもの」
幸せそうだった陛下の表情が陰る。頭をぎゅうっと抱き寄せられ、厚い胸板に顔を埋めさせられた。力いっぱい抵抗するが、陛下の腕っぷしにはかなわなかった。
「地味なんかじゃない。素朴でナギのよさが出ている唯一無二のスープじゃないか」
「勘弁してください……」
過大評価だ。ナギは本気の困惑半分、気恥ずかしさ半分で溜息とともに、されるがままに身をゆだねた。
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