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しがない魔法使いと陛下なんて、明らかに不釣り合いな関係だ。焦がれる気持ちを押し殺し、ナギが何度「失礼ながら陛下の気の迷いだと思います」と申し上げても、陛下は「いや違う」と真剣な顔をする。それに続く言葉はいわずとも知れている。だが、口にしたことはなかった。
陛下は誰よりもたくさん、おいしそうに嬉しそうにスープを召し上がってくださる。ナギが直接その姿を見る機会は少ないが、従者から彼のご様子は幾度となく伝えられていた。
そのたびにナギは面映ゆくなる。自分のスープで焦がれる人が幸せになっているという事実に、満たされていた。
ナギは日々の食事に加え、隣国との会食の調理担当に呼ばれることも多い。会食の様子を直に見られなくとも、陛下は時間の合間を縫ってこっそりとキッチンを訪れる。お相手の食文化について陛下は楽しそうに語り、「ナギのスープを楽しみにしている」と別れ際に抱きしめてくれた。
「お前さえよければ、いつでも関係を諸国へお披露目したい」
「滅相もない」
「私が愛するのはナギだと」
「勘弁してください……」
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