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時々耳にする「陛下は不能である」という悪い噂を払拭するためにも、ナギという同性の一般人が恋人と知られてはならないのだ。
陛下は万人に等しく愛を注ぐべきである。若くして王の座についた彼は、職責を果たし、そしてカリメルンの繁栄に尽力していた。勇敢で、心優しい彼なくしてはこの国は成り立たない。
陛下とナギの年はそう変わらないはずなのに。頼もしい背中を陛下は持っていた。
そんな彼の愛に応えてあげてもいいのではないか、と思う時もある。
けれど、ナギは弱虫だった。陛下の本当の愛を知ってしまったら、もう独りぼっちで生きていけないと思う。
何も考えず甘えられたら楽なのに。彼に焦がれる思いが恋であることには、とっくに気づいていた。だが、その感情を認めることが難しい。
耳元に陛下の吐息が吹きかかった。
「……昨日は無理をさせて悪かった」
「っ、あ、え。っと、いえ……」
顔がみるみる熱くなる。昨日、というのは夜のことであった。大きな手に腰を優しくなでられ、背筋を甘い震えが走る。首を横に振ると、陛下は小さく笑って手を放してくれた。
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