47人が本棚に入れています
本棚に追加
ナギのモチベーションがみるみる下がっていることは、周りの料理人にも明らかだったのだろう。次第に挨拶も交わさなくなり、終いには朝来てから帰るまで、誰とも話さない日が続くようになった。代わりに、自分のことを噂するひそひそ声が耳に入るようになった。
これが孤独か、とナギは思った。
ある日、スープの担当を外された。
ナギはそれに対して、悲しくも悔しくもなかった。だって、今自分が作っている料理は、彼に奉げるものではないから。
料理長は自分にクビを言い渡した。
その時、「ああ、陛下に宣告されなくてよかった」と心の底から思ってしまった。焦がれた思いはくすぶって、城を去ってからもずっとナギの奥底で火種を抱えつづけていた。
その恋心はじくじくと痛く、切ないものだった。
最初のコメントを投稿しよう!