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「ふうん。いや、ケータリング指定するの珍しいなあって思って。お兄さん前のライブんとき来てたでしょ。そのとき仲良くなったのかなって。いや、スープ飲んで気づいたんだけどね。同じお店で、店員さんも、って」
「えっ、あ、そうですか? ありがとう、ございます……」
渚は目を丸くした。うれしい。スープで認識されるほど、やりがいを感じることはない。
メンバーたちは帰り、業者の渚だけが後片付けをしていた。静まり返ったペントハウスはがらんとしていて物寂しくなった。
人の多いところが苦手なはずだったのに、どうして寂しく思うんだろうか。
心境の変化に自分が一番驚いていた。
「結構高くついたな」
神庭は嫌味たっぷりに渚の前へ現れた。なんでマネージャーに渡したはずの領収書が、神庭の手元にあるのか。
七万円という価格設定は妥当だろう。普段芸能人が口にするケータリングはもっと高級なものが多いはずである。むろん、領収書を神庭らが見ることはまず無い。
なので、渚の提示した価格に驚かれるのは、神庭が意外と庶民的な金銭感覚の持ち主であることの証拠なのかもしれない。
「結局神庭さん、途中で抜けてましたよね」
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