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渚は首を横に振り、どうしようかと考えこんだ。
「とりあえず、洗っていけばいいじゃん」
「……え?」
「事故処理が終わるのを待つにしてもなんにせよ、道具は早めにきれいにしといたほうがいいだろ?」
でも、ここの会場は何時まで押さえているのだろうか。あまりギリギリに退出しても、向こう方にご迷惑をおかけしてしまう。
その上、綺麗に磨き上げられた生活感のないシンクで洗い物をするのに抵抗があった。水垢ひとつないどころか、使用した形跡すらないのではなかろうか。
立ちすくんでいる渚の肩を神庭はポンと叩き、見当違いなことを言った。
「残飯あるの? 俺食うから。気にしなくていい」
「……そこ⁉」
こらえきれずに噴き出してしまう。
「え?」
神庭は大きく目を見開いて固まった。
その表情が面白くて、余計に笑いが止まらなくなる。お腹が痛い。不思議だ。なぜこんな些細なことで笑いのツボに入ってしまったのか、自分でも理由がよくわからなかった。
食べ盛りのメンバーのおかげで残飯はない。大量に準備したスープも、ごはんも、パンも。
ふたを開けてからっぽの鍋を見せると、神庭はあからさまに残念な顔をした。
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