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いつのまにか肩の力が抜けていた。渚は大きく伸びをして「久々にすごい笑いました」とつぶやいた。
が、神庭は「そうじゃなくて」とはっと真顔に戻り、TVリモコンのスイッチを手に取った。
オレンジ色の炎が燃え上がる現場の状況が液晶画面いっぱいに映し出される。
「え? え? これ、さっきの事故?」
日没後の暗闇の中で、車両が轟々と燃え盛っていた。どうしようか。状況はちょっと事故ったという感じではない。渚の声は震えてしまった。
「……嫌じゃなかったら、泊まっていけ」
「?」
「ここ、俺の家だから。……人が住んでるとは思えないって、よく後輩に言われるけれど」
「えっ、住んでるの?」
「また言われた」
くつくつと神庭は喉で笑った。この部屋は、あまりにも生活感がなかった。ダイニングは広々としており、作り付けの食器棚にはそれ相応の人数分の白い食器が綺麗に重ねられていた。カトラリーも揃いで準備されているせいで、渚はここがパーティ用のレンタルルームと完全に思いこんでいた。
「じゃあ、一人でこんなに広いソファとテーブル使ってるんですか?」
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