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部屋の中央には二〇人腰掛けられそうな程大きな革張りのソファがあり、今日もそこで皆が談笑していた。
「ああ。カップ麺を待つ間に寝っ転がれて便利だ」
「嘘お……」
宝の持ち腐れが過ぎる。
スタジオのようなキッチンのある部屋が住処なんて羨ましい限りだ。もしこんなところで暮らしていたら、毎日の料理が楽しくて仕方ないだろう。
最初はあまりにオシャレすぎて気が付かなかったが、立派なオーブンまで備え付けられている。大きなピザも余裕で焼けそうな奥行があった。
「わざわざケータリングを呼ばなくても、ここで作ればよかったのに」
しかし、神庭は料理にとんと興味がないようであった。
「洗い物くらいなら俺でもできる。貸せ」
神庭は腕まくりして汚れた鍋を持ち上げた。
朝、リビングを覗くとあのソファで神庭は寝息をすうすう立てていた。うららかな朝の日差しに照らされて、彼はスポットライトの中にいるようだ。ステージにいなくとも、自然に光が集まる姿にため息がもれた。これがスターの成せるわざなのかと思った。
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