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「お前と俺は恋人だった。今世でもそうあるべきだ」
言葉が出ない。言っている意味をようやく飲み込んで出たのは「今世って、なに」という間の抜けた質問だった。
神庭の指がとん、と自分の胸に触れる。
「今がここで」
右腕を伸ばし、そして手のひらをくるりと裏返した。
「過去の反対側。ここが俺たちの出会った前世だ」
長い腕だ。大きな手のひらだ。
言っていることが理解できず、神庭の動きを只ぼーっと眺めてしまった。
「左腕に赤痣があるだろう。それは、お前が前世で俺を庇ってできた怪我の跡だ」
「……っ⁉」
思わず自分の腕を隠す。信じられない。誰も知らないはずの秘密を告げられて怖気だった。
「違うか?」
「……ち、違くは……」
渚の左肘から肩にかけて、ひっかいたような細長く赤い痣がある。良性の血管腫で病気じゃない、と言われてはいるものの弱気な渚は他人に言及されるのが怖くて学校の水泳も不参加だった。
もちろん、この痣を親以外に見せたことはない。一年中長袖のシャツで暑いときも我慢していた。赤さは体が火照ると余計にひどくなる。
「君は、何者ですか」
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