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神庭を見上げる。神庭は昔を懐かしむような顔で「そう睨むんじゃない……覚えた」という。
「今まで、老若男女、いろいろな形に生まれ変わった君を見てきた。なぎさ、という男に生まれ変わった今世は今までで一番昔の姿に似ている」
「……寝言は寝て言え」
「寝言じゃない。いつかは自分が猫になったせいで、お前が殺されるのを目の前で見るだけだった。みすみす見過すなんてもう勘弁だ……」
距離をとりたいのに、顔を近づけられた。ゲイということも、人見知りということも、弱みを神庭だけには握られたくなかった。
「全く。今世でも不用心なやつだな」
長い指に輪郭を捉えられる。
「……や、」
やめろ、と拒絶する前に唇を重ねられた。神庭のやわらかな粘膜の感触が生生しく、渚はぷるぷると震えながら胸板を押し返した。
唇の感触は拭っても消えることはなかった。不思議なことに気持ち悪くはない。ただ、心臓が今までにないほどバクバクしていた。
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