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風のうわさで、カリメルンの王が罷免されたと聞いた。ここは首都から遠く離れた小さな町で、政界の噂話が流れるのはよほどのことである。
前陛下のときはこの町も悲しみに包まれたと聞いた。
が、弟君はそれまでの信用はないみたいだ。
陛下はこの町まで視察に訪れたことがあったそうだ。それはナギが陛下と出会うよりもずっと前。まだ十代の頃に単身で領土を巡り、国民の生の声を聞いて回ったという。
それを教えてくれたのは、ナギと陛下との関係などつゆ知らぬ店の常連さんだった。
「みゃ」
足元でノワがねえねえと鳴いた。しゃがみ込み、魚の切れ端をやると嬉しそうに小さな口で食べ始めた。
「お前がいてくれてよかった」
つややかな黒い毛並みにそっと触れる。この地でスープ屋を始め、しばらく経ったころ、ノワが子猫を見つけてきた。衰弱しており、命の灯が今にも消えそうな子だった。
見捨てるわけにもいかず、ナギは子猫にかかりきりになった。定番メニューを大幅に減らし、文字通り必死に看病をした。
そこから着想を得た〝ミルクスープ〟は店の新たな人気メニューとなった。
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