5.前世-黒猫

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 元気になった子猫は、ぜひ引き取らせて頂きたいと申し出られた方の家の子になった。  人との交流はあれど、ナギが本当に心を開いている相手はいない。  過去にひとりだけ、心を許した人がいた。それが、陛下だった。  昔を懐かしみながら、ノワの豊かな毛並みを味わっていると、突然毛が逆立った 「シャーッ」 「どうしたの?」  聞いたことのないような声を出し、ナギの背後を見ている。  振り返ると、左腕に熱い痛みが走った。斬られた。ギラリと光る刃物には血のりがべったりとついている。理解するよりも早く、ナギは反射的に身を挺してノワを守った。 「……ッ、痛」 思い切り腕を振り払うと、男の顔を隠す布がわずかにずれた。  その顔に見覚えがあった。陛下の弟だ。ナギは声にならない声で叫んだ。 「何をする……ッ」  だが、次の瞬間には背中に激痛を感じ、床へ倒れこんでしまった。
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