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元気になった子猫は、ぜひ引き取らせて頂きたいと申し出られた方の家の子になった。
人との交流はあれど、ナギが本当に心を開いている相手はいない。
過去にひとりだけ、心を許した人がいた。それが、陛下だった。
昔を懐かしみながら、ノワの豊かな毛並みを味わっていると、突然毛が逆立った
「シャーッ」
「どうしたの?」
聞いたことのないような声を出し、ナギの背後を見ている。
振り返ると、左腕に熱い痛みが走った。斬られた。ギラリと光る刃物には血のりがべったりとついている。理解するよりも早く、ナギは反射的に身を挺してノワを守った。
「……ッ、痛」
思い切り腕を振り払うと、男の顔を隠す布がわずかにずれた。
その顔に見覚えがあった。陛下の弟だ。ナギは声にならない声で叫んだ。
「何をする……ッ」
だが、次の瞬間には背中に激痛を感じ、床へ倒れこんでしまった。
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