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次の瞬間、地面を揺らすような爆発音が一帯に響く。
「わっ」
小さく悲鳴をあげた渚は、目を閉じた。しかし手は耳元をふさぐのに間に合わず、鼓膜はびりびりと震え、耳鳴りがきーんと残る。
差し出していた小さなスープカップは、机の上にひっくり返っていた。我に返り、こぼれたスープを目の当たりにして青ざめる。
「……っ、大変申し訳ございません。お怪我は」
「大丈夫。っ、あーびっくりしたあ」
あっけらかんと少年は笑い、そのまぶしさに目がやられた。「お兄さんこそ大丈夫? 俺拭こっか」とダスターを手にしてくれたが、タレントにそんなことはさせられない。
口数少なに立っていた黒髪で長身の男が、低い声で少年の肩をどついた。
「――おい、特効あるからイヤモニはずせって言われてただろ」
「あ、忘れてた。へへ神庭さんすんません」
「ん」
渚は息を止めた。次は自分が責められる番だ。だが、男はスープをこぼしたことに対して一切触れてこなかった。
拍子抜けしていると、ぐーっとお腹が鳴る音が盛大に響いた。
僕? と調子を確かめるが違うようだ。
「食い意地だけは相変わらずだな」
「へへ」
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