6.今世-天文台

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 渚は先にチェックインを済ませたが、地元の老夫婦が運営しているアットホームなお宿でとても好印象だった。でも、ここにアイドルは泊まれないだろうなと思う。  しかし、近くにビジネスホテルのようなものは見当たらなかった。  彼らは一体どこに宿泊するのか、芸能人はもっとセキュリティの高い駅前のホテルまで戻るのか、まさか車中泊か。まあ、この民泊にはいなはず。神庭と出くわすような事態にはならないだろう、と胸をなでおろして仕事へ向かった。  ケータリングのコーナーにはパラパラと人が来る。午前一時ごろ、人懐こいメンバーが「渚さん、面白い話していいですか」と話しかけてきた。  神庭がむねきゅんシーンで頭を悩ませ、色々な人を質問攻めにしているという謎情報だ。割りとどうでもいい内容だったが、彼がやたらと楽しそうに話すため、ついつい耳を傾けた。 「で、ですね、神庭さんマジで悩んでるんすよ。面白くないすか!?」  国民的アイドルならば、女の子をどきりとさせる仕草には慣れていると思っていた。 「へえ……。神庭さんが相談する側だったんですね」
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