6.今世-天文台

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 神庭たちは内部の様々な所で撮影をしていたようだが、渚はただのスタッフなので、ここで一番有名な巨大望遠鏡や、ミリ波干渉計を結局見られずじまいだった。  門は閉まっていた。当たり前だ。深夜に開いているわけがない。  神庭は「完全に忘れてた」と頭を掻き、がしゃん、と門を背にもたれかかった。  向き合うと、神庭の髪は夜風に揺れていた。 「言葉にするのもバカバカしくて嫌んなるんだけどさ、門乗り越えちゃえ、とかルール違反なことは性根からできないんだよね。どうしても、国の代表だった頃の……が染みついてて」  また、前世の話だ。  思わず眉を顰める。神庭の言っていることがまるで嘘とは断言しきれないのも、渚を困惑させる理由だった。 「怖いんだろう?」  神庭は穏やかな声でいった。その声は渚の隙間にすっと入り込んで、はまる。神庭はなにが、怖いと思ったんだろうか。自分のことなのに、神庭のほうが理解しているような気がする。 「……怖い?」 「俺は男が好き、と公にしているけれども」  暗い空に流れ星がひとすじ走る。 「渚に、何の心配もせずに、意識してほしいからだ。誰でもいいわけじゃない」
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