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中編
お通夜には、もちろん喪服で行った。髪の毛は明るいブルーだったけど、こればかりは仕方がない。
タイチさんのお母様は、涙を拭いてそこに座っていた。すぐに私に気付いたようで、私の事をキッと睨んで来た。
「あ、あの……私……ミラです。タイチさんのためにお線香を上げたくって……」
お母様は、泣きながら私にこう訴えた。
「あの子はあなたの事が大好きでした。生きる糧だって言ってました。だから、推し活だって見守って来たんです。なのに、私のあの子は天に召されてしまった……あなたのせいだなんて言いたくない。でも、あの子があんなにお金を欲しがらなければ、別の人生があったんじゃないかと思って涙が出るんです……」
聞けば、タイチさんのお父様はタイチさんが小さい頃に病気で亡くなって、お母様はタイチさんを女手一つで育てて来たんだって。
「あの……私……最後にタイチさんのために歌いたいんです」
「え……?」
「こんな時に歌うだなんて非常識だと思われても仕方がありません。でも、タイチさんはいつも私の歌声を褒めてくれたんです」
それならば……と、私はタイチさんの棺の前で歌う事を許された。
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