あいつは嘘が下手

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 4月1日、お互いに嘘を吐く、相手が恋人だと言う嘘。 「嘘でも経験して置いたら本当に出来た時参考になるじゃない。嘘だから失敗しても問題ないし」  ちょっぴり挑発するように言えばシュンは対抗意識を燃やして乗って来た。  二人きりのデート。ずっと夢見ていた時間。  私は腐れ縁キッコの仮面を捨て本来の私で振舞える。  素を晒すのは今更ながら恥ずかしい、けど本当の自分を見て欲しくもある。これで距離を取られてもエイプリルフールでしたで済ませられる。  不安と高揚のまま相手を見ればちょっと戸惑った瞳が私を映した。  そんなに違う?キッコじゃない?でもこれが私。これが私なのシュン。  歩き出すと彼は歩幅を合わせてくれた。いつもは私が合わせるのに。そう、女の子として扱ってくれるのね。でも表情が微妙。やっぱりキッコはキッコなのかな。恋人の振りは出来ないのかもしれない。顔も向けてくれないし。  本当に嘘を吐くのが下手だなぁ。 「手とか繋がないの? 」  繋いでほしい。 「ば! 何言ってんだ、外だぞ?人前だぞ? 」 「あれぇ?意識しちゃってる?私相手に。嘘なのにマジになってる? 」  挑発するけど、反して差し出す手は戸惑いを隠せていない不器用な私。でも彼はいつもの仕草で握ってくれた。  大きな手。小学生の時は同じ位だったのに。  強く握った手から若干力が緩む。今更腐れ縁なんかと握りたくないのかな。でもだめ。すぐには放してあげない。
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