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IX
「よ、おかえり」
諸連絡を済ませて会社に戻ると、社長と白峯さんと皐月さんがスタンバイしていた。
「甘味です」
「粗茶よォ」
三人なりの日高さんへの配慮だろう。必要以上に彼を責めることはないらしい。白峯さんは”私大人なので”と言いながら僕にもお菓子を分けてくれた。
「皆さん、この度はーー」
謝ろうとする日高さんを社長が止めた。”それはこの案件が収まってからだろ”と言わんばかりの目だ。
「さ、デスマーチの始まりと行こうか」
*
「今年のエイプリルフール企画は”5分毎に咲くエールの言葉”です。特設サイト上で桜の木が徐々に開花していくデザインになります。それぞれの桜の花をタップすると小説投稿サイトに投稿された作品から、作中エールの言葉とクリエイター名、リンクが表示されます」
僕はテストサイトを見せながら公開までのフローを整理していく。
「日高さんと僕は一日で287作品をリストアップします。これはすたぶりえさんから頂いた1500作の参考作品です」
「! わかった」
「木之下、俺たちは何したら良い?」
「社長はテストサイト制作を、白峯さんはデザインの再現性チェックを、皐月さんはユーザー目線でサイトを確認してほしいです」
僕はOJTで誰よりも皆の得意分野を理解している。自分一人では出来ないことも、他の人の力を頼ることで実現させられる。
社長は出前でピザを頼みながら号令を掛けた。
「よし。歯ァ食いしばって耐えないといけねぇ時が来たな!」
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