新たな門出には、最高の笑顔で

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「タイプ、イコール好きだと思ってなかったから、ごめん、全然気付いてなかった」 「だって、気付かれないようにこっちがしてたからね」  亮はそんな話を涼しい顔をして言った。本当はどれほど勇気がいったことだろう。告白自体勇気がいるものだろうに、それも従姉妹に。 「え、いつから?」 「いつから……記憶上初めて会ったときからかな」 「え、じゃあもう三十年以上ってこと?」 「そうなるね」  私はただただ驚きとともに、和哉のことを考えていた。私も和哉に恋をして十年以上が経とうとしている。それでも最初の数か月は付き合っていた和哉。その三倍、ただただ好きでいるだけの人生とはどんなものだっただろう。  それから、私たちはそれまでまったくと言っていいほど連絡を取らなかったのに、頻繁に連絡を取るようになっていた。私の中で亮は、理想的な性格、性質を持った人だった。こんな人が相手だったらどれだけ幸せでどれだけ楽だろうと思ったものだった。器がとにかく広く、大抵のことを許容できてしまう人。そして、優しさに満ち溢れて、熱いものを持っている人。私と価値観の似た人。こんな要素を兼ね備えた人には逢えないだろうと思っていたそのすべてを亮は持っていた。だから、私もすんなり受け入れられたのかもしれない。  付き合おう、という話はとくにしなかった。中距離くらいに位置する私たちはそんなに頻繁には会えなかったけれど、それでも月に一度くらいのペースで会うようになり、当たり前のように肌を重ねていた。  亮には何でも話せた。それこそ、私がどれだけ和哉を好きで、好きの理由など分からないほどに自然に愛していることを私は亮に話していた。どこが好きかもわからないほどに、私は和哉を愛していた。そういることが当たり前で、好きでいないことの方が最早不自然なのだと話したとき、亮は分かる、と言った。 「僕も、そんな感じ。弥生を好きなのが当たり前だから、何してても可愛いと思っちゃうし、どんな弥生でも好きって思っちゃう」  そんなことを、照れながらも亮は堂々と言ってくれた。和哉を好きな私を、そのままひっくるめて愛してくれたのだった。こんな人には本当にもう逢えないんじゃないかと思った。話せたのも、昔から私を知っていてなんでも話せるような関係だったからだ。なんでも話せるような雰囲気を彼が持っていたのもあるだろう。何を話しても離れていかないという妙な確信があった。私が和哉に何を話されたとしても好きでいたのと変わらないのと同じだと勝手に感じてしまったからだろう。 「私も好きだよ」  とだから、私も応えた。今までの恋愛遍歴からすれば、私は興味のなかった人から好意を寄せられると極端に引いてしまうところがあったのだが、亮に対して、本当にそう思うことがなかったのは未だに不思議でならない。
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