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来週からは仮入部が始まる。仮入部というのは一週間ほど気になる部活動を見学や活動の体験ができる期間のことだ。 正式に入部するのはまだ先だがこの学校では仮入部=入部とみなされているため、ここ数日はどの部活も熱心に勧誘を行うのだ。 来週からが楽しみだと先輩と会話をしているうちにパートでの練習時間が迫っていた。自分のクラリネットと彼女のクラリネットを持ち、先輩は二人分の譜面台を持ってクラリネットパートに割り当てられた教室へと急いだ。 教室では樋口先輩がすでに練習を始めており、急いで教室に入ってきた二人を一瞥し、遅すぎと少し怒っているようだった。 部活動は午後六時まで続き外が暗くなってきたところで今日は解散となった。自転車置き場まで来るとほかの部活はまだ練習を行っているようでまだ十数台の自転車が残っていた。 自転車のカギを解錠し自転車に跨った。高校から家までは三十分かかる。暗くなった道路は不気味だった。不審者が出てきそうな事故が起こりそうで自転車の運転も慎重なものになる。特に街灯が切れかかって点滅している道は、何かこの世のものではないものが出てきそうな雰囲気で早く家に帰りたくなる。 ただ、家に帰っても誰もいない。父親は単身赴任で遠くの県に行っており母親はほぼ毎日残業続きだ。妹の部活は夜七時過ぎたまに八時まで続くことがあり帰っても明かりは点いておらず家はがらんとしている。部屋にあるスイッチさえ入れれば部屋は明るくなるのだが、それでもやはり誰もいない場所、自分の目の届かない場所から何かが出てきそうで外の些細な物音まで気になってしまう。 しばらくぼんやりとしているとガチャガチャと玄関の扉が開閉される音がして数秒後には妹が入ってきた。時計を見ると長針が一周していた。 「おかえり、ごはん先に食べる?」 「ただいまー、早く食べたい」 椅子に座り疲労からか妹はぐったりとしていた 「いつも思うけれどよく続けられるよね。僕だったら三日で退部していたと思う」 「絶対そんなことはないと思うよ」 「毎日疲れて帰ってくる悠佳を見ていたら入部しても絶対辞めていたと思う。指導も厳しそうだし」
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