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あれ以来、あの男は現れなかった。
怒っているのか、呆れているのか。
それとも見捨てたのか。
もし、見捨てたとしたら、あの男の行動なら納得出来る。
むしろ、何故今までいたのかわからない。
まあ、頼まれたからだって、以前に言われたのを思い出した。
頼まれなかったら、とっくの昔に殺していたのだろうか。
小さい時に会っていた、あの男は本当に優しくて頼りになっていたのよね。
不覚にも初恋で、今も。
ふいに紡ぎだそうとする言葉を否定するかのように頭を強く振った。
くらくらくら、、、。
やりすぎたのか、軽い目眩に襲われてしまう。
........絶対にありえない、絶対に。
だって、あの男は私が嫌いだもの。
命令に従ったまでって言っていたしね。
私の胸が苦しいのは本当は知っていた。
無責任で俺様で、寒くなるような冷たい目で私を見る男を見る度に傷つくのもね。
でも、それでも嫌いになれない。
それ以上に私の気持ちを知っているから。
お願い、見捨てないで!
なんて想いは、絶対に知られたくない。
あの男を嫌いと言うしか出来ないの。
だって、絶対に過ちは繰り返してはいけないのだから。
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