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16話 プレゼント
「もしかしてですが……プレゼント、開けてないですか」
「あっ……」
「はあ……そういうことか」
ため息をついて、僕の肩に頭を乗せていた。息がかかってくすぐったくて、変な声が出てしまう。
そこで下に着きそうになったから、僕は引き離した。凄く辛そうにしていて、目を見ることが出来なかった。
「もう、着くから」
「少しだけ、チャンスを下さい」
「……はあ、今日だけだから」
「ありがとうございます」
そう言って優しく微笑んでいて、夜景と一緒になってとても綺麗だった。手を繋いで僕たちは、遊園地を後にした。
僕の家に着くまでの間、僕たちの中には会話がなかった。部屋に入ってとりあえず、ソファに座ってもらう。
仕事部屋の机の上に、置いていた紙袋を取りに行った。正直、この中を見ても何も変わらないと思う。
「この紙袋の中ね……」
よく分からないけど、リビングに行って金城くんの隣に座った。僕は開けるべきか、悩んでいた。
もし開けても何も変わらなかったら……そう思ったら、急激に悲しくなってきた。すると震えている僕の手に、手を重ねて優しく微笑んでいた。
それだけで急に勇気が湧いてきた。僕は深呼吸をして、紙袋から中に入っている箱を取り出した。
「これ……紅茶?」
「はい、律さん。紅茶好きって言ってたので」
確かに好きだけど……その話したの、いつだっけ? 自分でも覚えていないのに、覚えてくれてたんだ。
そう思ったら、嬉しくなって涙が止まらなくなってきた。すると優しく頭を肩に持っていって、撫でてくれた。
僕の方が年上なのに、これじゃどっちが上か分からない。紅茶は嬉しいけど、これを開けていても変わらないと思うんだけど。
「紅茶も重要ですが、一番はその上に置いてある手紙です」
「手紙?」
「恥ずかしいですが、読んでください」
「目の前にいるんだから、言ってよ」
「……口に出すのが、恥ずかしいんです」
そう言って顔を真っ赤にしていて、ドキドキしてしまう。恥ずかしい内容の、手紙って何が書いてるんだろう。
『律さん、お誕生日おめでとうございます。運命の番として出会いましたが、一目惚れでした。
最初は可愛らしくて、綺麗なその瞳に心が奪われました。今では中身に完全に惚れました。
優しくて繊細で、そんな律さんを守りたくなりました。俺と結婚を前提にお付き合いしてください』
手紙を封筒から取り出して、読んでみる。そこには……確かにとてつもなく、恥ずかしい内容が書いてあった。
「どうでした……」
「まず、内容が長い」
「うっ……」
「結婚って書いてあるけど、そんな重要なこと手紙で書かないでよ」
「うぐっ……」
僕の指摘全部に、ダメージを喰らっているようだった。その様子が可愛くて、少し虐めたくなった。
まあでも既に瀕死の状態になってるし……この辺でやめておこうか。正直嬉しくて、完全に不安がなくなったわけじゃない。
それでもまた少し、信じてみてもいいのかなと思えた。そんなことを素直に言えるようなら、こんなに拗れてないと思うけどね。
「金城くん、顔を上げて」
「えっ……」
顔を上げた瞬間に、僕はほっぺに優しくキスをした。口には何度もしてるけど、自分からするとなると恥ずかしい。
僕にはほっぺが限界だった……僕のことを見て、驚いているようだった。しかし直ぐに、優しく微笑んで抱きしめてきた。
「俺と結婚を前提に、お付き合いして下さい」
「……仕方ないから、付き合う」
「律さん、好きです。大好きです」
「もう分かったから」
「こんなんじゃ、まだ足りないです」
甘えた様子で抱きついてくる彼が、マジで可愛くて頭を撫でた。もうっ、なんなの……この人、可愛すぎる。
僕の顔をマジマジと見つめてきて、端正な顔立ちが近づいてきた。頬を触って腰を支えてくれて、僕は静かに目を閉じた。
優しくキスをしてきて、次の瞬間……舌を入れてきて、絡めてきた。何、これ……変な声が出て、体がビクンと跳ねてしまう。
「んっ……な、に」
「はあ……律さん」
銀の糸が口から出ていて、体が熱くなってきているのが分かった。完全にヒートを起こしていたみたいで、彼も当てられているようだった。
彼から甘い匂いが漂ってきていて、興奮しているのが分かった。途端に恥ずかしくなって、目を逸らした。
ソファに押し倒されて、優しくキスをされた。この人のキス……気持ちよくて全てを、預けたくなる。
「んっ……」
「律さん……」
首筋にキスをされて、Tシャツ越しに胸を触られた。そんなとこ、普段触らないけど……気持ちよくなってしまう。
Tシャツを捲り上げられて、お腹のところにキスをされた。そんなとこ……あれ、待って……。
今日何色の下着着てたっけ? ヤバいような感じがする。そう思ったから、彼の顔を見てそれっぽい理由を言ってみる。
「ま、待って……」
「はあ……何で」
「……その、心の準備が欲しい」
「……確かに、それにソファってのはよくないですね」
僕の言葉に複雑そうな顔をしたけど、直ぐに優しい笑顔になった。起き上がらせてくれて、優しく抱きしめてくれた。
「もう少しだけ、こうさせて下さい」
「うん……いいよ」
そんな優しい顔で甘い声で囁かれたら、何も言えないじゃん。口から出まかせで、それっぽい理由を言ったけど……。
漫画や同人誌では読んだことあったけど、実際にするとなると覚悟が必要になる。他にも準備は必要だし、今はできないよね。
「今日、泊まっていくでしょ」
「いいんですか」
「うん……泊まって」
「はあ……俺以外に、絶対に言わないで下さいね」
彼の言葉の意味が分からなかったけど、真剣に言っているのは分かった。そのため、何度か頷くと微笑んでいた。
その日は同じベッドで、目を見ながら静かに寝た。アラームの音で目が覚めて、甘い匂いが漂ってきた。
この匂い……落ち着いてしまう。ぎゅっと掴むと、笑い声が聞こえてきた。目を開けると、微笑んでいる金城くんが目に入った。
「おはようございます、律さん」
「んっ……おはよう」
おでこにキスをされて、ドキドキしてしまう。綺麗な顔に見惚れていると、そこで我に返ってそっぽを向いてしまった。
「きょ……今日、仕事は?」
「出社しないとですね。スーツ、取りに行かないとな」
「その……金城くんは、一人暮らし?」
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