46話 危機感

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46話 危機感

「もう一度、体洗う?」 「そうだな……でも、これから汗かくけど」 「どういう意味?」 「俺が言うことじゃないが、律さんはもう少し危機感を抱いてほしい」  彼が腰を支えてきて、洗い場に向かった。その道中、意味の分からないことを言い始める。  汗かくって、そりゃあ夏真っ盛りだし。当たり前だとは思うけど……僕が言葉の意味を考えていると、いつの間にか洗い終わったようだった。  彼が鼻歌混じりで、次は自分の体を洗っていた。この前よりも、体に筋肉ついてるな。  そう思ってマジマジと見つめていると、目と目が合ってしまった。途端に恥ずかしくなって、思わず目を逸らしてしまう。 「どうした?」 「別に……何でもない」 「……体拭いて、上がるか」 「うん……そうだね」  彼に手を引かれて、脱衣所に向かった。着替えている間も、彼が周りを睨んでいるようだった。  変な行動は相変わらずな様子で、僕の着替えが終わるまで続いた。ホテルの備え付けの、寝巻き用の浴衣を着た。  でも僕が不器用すぎて、彼が無言で直してくれた。嬉しそうだったから、変人だなと思ってしまう。  髪を乾かしに行くと、彼は慌てていた。急いで着替えていて、下着を後ろ前に着ていた。  そして恥ずかしがっていて、鏡越しに見て面白かった。笑いを必死に堪えていると、いつの間にか来ていた彼にドライヤーを奪われた。 「一箇所だけ、乾かすと暑いだろ」 「確かに……でも、乾けばよくない?」 「はあ……ほんと、無頓着」 「えー、そうかな」  彼がため息混じりに言ってきて、彼が過保護なのだと思った。色々やってくれて、僕としては楽できるからいいけど。  湊くんがあそこまで、わがままというか……甘えん坊なのは、この人が原因なのかもと思った。  髪が乾いてから、僕たちは自分たちの部屋に行った。ベッドに座って、彼がペットボトルの水を飲んでいた。  暑いから水分補給は大事だね。そこで僕は大事なことを思い出して、鞄を漁って彼に細長の包みを渡した。 「誕生日プレゼント」 「嬉しい! 開けていいか?」 「うん、もちろん」  彼は綺麗に包装紙を剥がして、中から財布を取り出した。僕が選んだのは、黄色の編み込み式の長財布だ。  その様子を見て僕は、彼の隣に座った。彼が喜んでくれているのは、嬉しいんだけど。  あまりにもオーバーなリアクションで、少し戸惑ってしまった。 「一生大事に、家宝にします!」 「いや、使って」  そこまで喜ばれるなんて、思いもしなかった。でもこういうの、悪くないなって思ってしまった。  彼が僕を見て嬉しそうに微笑んでいて、僕も嬉しくなってしまった。気がつくと、彼が僕の頬を触ってきた。  ゆっくりと端正な顔が近づいてきて、僕は静かに目を閉じた。優しく触れるだけのキスをされた。  腰を支えられて、舌を絡ませてきた。体がフワッとして、一気に力が抜けて行く感覚がした。  銀色の糸が僕らの口から出てきて、それが更に気分を高揚させていた。倒れそうになっても、彼が支えてくれた。  この感覚に慣れるのは、まだまだ先になりそうだった。彼のペースに合わせるしか、出来なくて体を完全に預けていた。 「律さん、危ないから」 「うん……」  彼にお姫様抱っこをされて、しっかりと寝かされた。もう一度優しくキスをされて、あ甘い香りが漂ってきた。  首元にキスを落とされて、変な声が出てしまった。思わず口元を両手で抑えるけど、それでも隙間から漏れ出てしまう。  丁寧に浴衣の帯を外されて、胸元を舐められた。二回目だしまだ慣れていないからか、少しくすぐったさもあった。 「下着、つけなかったんだ」 「寝る前は、つけないし」 「綺麗だ」  僕を見て、うっとりとした表情を浮かべていた。僕よりも彼の方が、綺麗で美しいのにな……。  そんなことを素直に言えるのなら、拗れはしないのだろうなと思った。左胸を舐められて、手で僕の下半身を触っていた。  色んな快楽が襲ってきて、更に変な声が出てしまう。自分の声じゃないみたいで、少し恥ずかしくて必死に出さないようにしていた。 「律さん、声聞かせて」 「んっ……はずか……し」 「大丈夫……可愛いよ」 「あっ……んっ」  舌を絡めるキスをしながらも、僕の下半身を触っていた。気持ちいいのと、恥ずかしいのが混ざって変な感じがした。  僕は彼の腕にしがみついて、必死にペースに合わせていた。優しく微笑んで、メガネを外してベッド脇のサイドテーブルに置いていた。  彼の表情が上手く見えないけど、それでも不安にならない。彼になら体を預けても、大丈夫だと分かっているから。 「律さん……」 「んっ……あっ」  下半身を触りながら、首元にキスをして少し痛みを感じた。この痛みって何のあれなのか、分からないけど嫌な感じはしない。  それどころが気持ちよく感じてしまって、少しの怖さもあった。でもそれは彼にされることが、怖いんじゃない。  自分の体が、変わっていってしまうじゃないかという怖さだ。それでも気持ちよさの方が、勝ってしまうから不思議な気分になってしまう。 「んっ……」 「律さん、続けるよ」  僕が静かに頷くと、彼は優しくキスをしてきた。胸元から段々と、下半身の方にキスをしていった。  変な感覚がきて声が抑えきれずに、漏れ出てしまう。両手で抑えるのも出来なくて、ベッドシーツにしがみついていた。  下半身を下着越しに舐めてきて、体がビクンと跳ねてしまった。何の躊躇いもなく、舐めてきた。  右足を上げられて、構わずに舐めてきた。その間も胸元を触ってきて気持ちよかった。 「んっ……あっ」 「律さん、恥ずかしがらずに声出してね」 「でもっ……となりに……んっ」 「大丈夫、ここ壁厚いから」  そういう問題じゃない……モラルの問題というか、ベッドでこんなことしてていいものだろうか。  でもそれをいって、このままで終わらせられるのはしんどい。僕もだけど、彼のも見て分かるぐらいに主張しているし。  より一層強くなってくる甘い香りに、頭がクラクラしてきた。舐めるのを止めたかと思うと、今度は下着を一気に下ろされた。 「んっ……あっ」 「可愛い」  今度は直接口に含んで、舐めてきて更に気持ち良くなった。両足を持ち上げられて、舐めながらお尻に指をつけてきた。  そこで彼は止めてしまって、鞄を何やら漁っていた。何してるか分からないけど、このままで放置しないで。
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