194人が本棚に入れています
本棚に追加
/54ページ
51話 魅力的
彼曰く……湊くんに頼られるのも、お兄ちゃんになるのも苦じゃなかった。でもいつからか、自分の感情を押し殺すようになった。
嫌なことがあっても、お兄ちゃんだからって我慢していた。直情型の湊くんを、カバーしている間に一歩引く癖が出来た。
なんか、それは理解出来るような気がする。鹿野のことを知って、どこまで本気か分からないけど喧嘩しに行きそうになった。
天真爛漫なだけでなく、本当にいい子だし。今日だって、僕のために気を遣ってくれたんだよね。
確かに僕でも、同じとまではいかなくても……湊くんのために、色々したくなってしまうだろう。
「湊は本当に小さなことでも、直ぐに気がついて聞いてくる」
「本当に、周りの人のこと見てるもんね」
「たまに隠したいことを、気づかれて焦るけど」
「しかも悪気がなさそう」
僕の言葉に彼は、何度も何度も頭を縦に振っていた。湊くんって、ある意味で強者だし大物だよね。
でもそのお陰で、こうして透真くんと一緒にいられるんだけど……その点に関しては、感謝しかない。
湊くんと……ついでにあのバカがいなかったら、付き合うことなんて夢のまた夢だっただろう。
「その、暴言とかは嫌だけど……少しずつでいいから、言ってほしい。僕も頑張るから」
「律さんに、暴言吐いたりしないよ。一生大事にするから」
「そういうこと、よくサラッと言えるよね」
「律さん限定だよ」
この人のこの素直さというか、直球さは凄いよねって思ってしまう。恥ずかしいことを、言っているって感覚がないんだろうな。
肩を抱かれて、引き寄せられた。フワッと香ってきた甘い香りが、焦燥感とかを少し和らげてくれた。
「不安なことも全て、そして好きだって伝えるしかない」
「何、急に」
「今は直ぐに出来ないと思うが、それでも俺は律さんと対等になりたい」
「僕もだよ……些細なことで、離れたくない」
それに僕たちの性格上、このままだとまた繰り返すと思う。ここは無理にでも、少し衝突しとくべきかと思う。
「少しでいいから、本音を聞かせて」
「上手く言えないかも」
「上手くなくても、辿々しくてもいいから」
彼は少し悩んだ末に、ポツリポツリと話してくれた。年が六つ離れていて、子供だと思われてしまうんじゃないかって不安に思っていた。
それを聞いて開口一番に思ったのは、そんなことか……だった。彼が本気で悩んでいることを笑うのはよくない。
「気にしすぎだよ。そんなとこも、可愛いし」
「やっぱ、思われてた……」
「でもその方が、人間っぽくていいじゃん」
僕がそう言うと、彼は一瞬驚いていた。そして直ぐに、僕の肩に頭を乗っけてきた。何となくだけど、泣いているようだった。
いつか、泣いているところも見たいな。それって、僕に気を完全に許してる証拠じゃん。
強いとこも、弱いとこも全て見たいし見てほしい。もっと知りたくて、知ってほしい。
――――それがきっと、愛ってものでしょ。
ちょっと臭いかもだけど、僕はそんな関係になりたい。他でもない透真くんと、何があっても崩れない強い絆がほしい。
「人って、不思議だよね」
「何が?」
「欲しいものが手に入っても、それ以上が欲しくなる」
「確かにな……付き合いたいから、もっと一緒にいたいになって。今はそれ以上の関係になりたい」
彼の言葉に、僕は静かに頷いた。人ってこんなに欲深くなるけど、それは彼だからだよね。
誰かと恋人同士になるなんて、思いもしなかった。多分透真くん以外と、恋愛関係になることなんてない。
「俺は律さんの役に立っているのか」
「そんなこと、心配しなくていいよ」
「律さんにとって、そんなことなのか」
「そんなに、後ろ向きにならないでよ」
僕の言い方も、良くないとは思っている。誤解を生みやすい言い方を、してしまうみたいだ。
ただ僕からしてみれば、どうしてそんなに自信がないのか理解できない。透真くんは自分を、過小評価しすぎだよ。
――――こんなにも優しくて魅力的なのに。
「僕はその、口下手だし……思ったことを、そのまま伝えるのが苦手だよ」
「俺だって、苦手だよ。でも律さんの言葉を借りるのなら、人間らしいのかも」
そう言って微笑みながら、僕の顔を覗き込んできた。その時の表情が、いつものことながら綺麗だった。
僕は途端に恥ずかしくなって、思わず目を逸らしてしまう。でも優しく抱き寄せられて、顔が近づいてきた。
静かに目を閉じると、優しく触れるだけのキスをしてきた。目をそっと開けると、優しく僕を愛おしそうに見つめていた。
「律さん、好きだよ」
「ぼ……くも」
「え? ちゃんと言ってよ」
イタズラに微笑む彼が、少し小悪魔に見えた。それでも嬉しそうにしていて、もう少し勇気を出してみようと思った。
「うっ……口下手でもいいって」
「今は言ってほしい」
「す……き……んっ」
僕が想いを告げると、今度は舌を入れてきた。いつものことながら、彼のペースに合わせるしかなかった。
口を離すと僕らの口から、銀色の糸が見えた。彼の匂いが急激に強くなって、部屋全体に広がる。
メガネを外されて、テーブルに置かれた。視界がぼやあとしてしまうけど、それでも彼がいるから安心出来る。
彼のキスは気持ちよくて、体の力が抜けていってしまう。僕は彼の首に腕を回して、彼は僕の体を支えてくれていた。
ソファにもたれかけると、服越しに胸を揉まれた。首筋にもキスをされて、変な声が出てしまう。
「んっ……」
「律さん、気持ちいい?」
僕が静かに頷くと、今度は服を上に持ち上げられた。胸元にキスをしたままで、器用に下着を外された。
左胸を舐めながら、右胸を摘んだりこねたりしていた。僕は彼の方に手を置いて、必死に唇を噛んで声を我慢していた。
「服噛んで」
「んっ……あっ……」
彼に言われるがままに、服を噛んで上に上げていた。こんなこと、どこで学んだのだろうか。
回数を重ねるごとに、彼のスキルが上がっているような気がする。比べる対象がいないから、よく分かんないけども。
「集中して」
最初のコメントを投稿しよう!