51話 魅力的

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51話 魅力的

 彼曰く……湊くんに頼られるのも、お兄ちゃんになるのも苦じゃなかった。でもいつからか、自分の感情を押し殺すようになった。  嫌なことがあっても、お兄ちゃんだからって我慢していた。直情型の湊くんを、カバーしている間に一歩引く癖が出来た。  なんか、それは理解出来るような気がする。鹿野のことを知って、どこまで本気か分からないけど喧嘩しに行きそうになった。  天真爛漫なだけでなく、本当にいい子だし。今日だって、僕のために気を遣ってくれたんだよね。  確かに僕でも、同じとまではいかなくても……湊くんのために、色々したくなってしまうだろう。 「湊は本当に小さなことでも、直ぐに気がついて聞いてくる」 「本当に、周りの人のこと見てるもんね」 「たまに隠したいことを、気づかれて焦るけど」 「しかも悪気がなさそう」  僕の言葉に彼は、何度も何度も頭を縦に振っていた。湊くんって、ある意味で強者だし大物だよね。  でもそのお陰で、こうして透真くんと一緒にいられるんだけど……その点に関しては、感謝しかない。  湊くんと……ついでにあのバカがいなかったら、付き合うことなんて夢のまた夢だっただろう。 「その、暴言とかは嫌だけど……少しずつでいいから、言ってほしい。僕も頑張るから」 「律さんに、暴言吐いたりしないよ。一生大事にするから」 「そういうこと、よくサラッと言えるよね」 「律さん限定だよ」  この人のこの素直さというか、直球さは凄いよねって思ってしまう。恥ずかしいことを、言っているって感覚がないんだろうな。  肩を抱かれて、引き寄せられた。フワッと香ってきた甘い香りが、焦燥感とかを少し和らげてくれた。 「不安なことも全て、そして好きだって伝えるしかない」 「何、急に」 「今は直ぐに出来ないと思うが、それでも俺は律さんと対等になりたい」 「僕もだよ……些細なことで、離れたくない」  それに僕たちの性格上、このままだとまた繰り返すと思う。ここは無理にでも、少し衝突しとくべきかと思う。 「少しでいいから、本音を聞かせて」 「上手く言えないかも」 「上手くなくても、辿々しくてもいいから」  彼は少し悩んだ末に、ポツリポツリと話してくれた。年が六つ離れていて、子供だと思われてしまうんじゃないかって不安に思っていた。  それを聞いて開口一番に思ったのは、そんなことか……だった。彼が本気で悩んでいることを笑うのはよくない。 「気にしすぎだよ。そんなとこも、可愛いし」 「やっぱ、思われてた……」 「でもその方が、人間っぽくていいじゃん」  僕がそう言うと、彼は一瞬驚いていた。そして直ぐに、僕の肩に頭を乗っけてきた。何となくだけど、泣いているようだった。  いつか、泣いているところも見たいな。それって、僕に気を完全に許してる証拠じゃん。  強いとこも、弱いとこも全て見たいし見てほしい。もっと知りたくて、知ってほしい。  ――――それがきっと、愛ってものでしょ。  ちょっと臭いかもだけど、僕はそんな関係になりたい。他でもない透真くんと、何があっても崩れない強い絆がほしい。 「人って、不思議だよね」 「何が?」 「欲しいものが手に入っても、それ以上が欲しくなる」 「確かにな……付き合いたいから、もっと一緒にいたいになって。今はそれ以上の関係になりたい」  彼の言葉に、僕は静かに頷いた。人ってこんなに欲深くなるけど、それは彼だからだよね。  誰かと恋人同士になるなんて、思いもしなかった。多分透真くん以外と、恋愛関係になることなんてない。 「俺は律さんの役に立っているのか」 「そんなこと、心配しなくていいよ」 「律さんにとって、そんなことなのか」 「そんなに、後ろ向きにならないでよ」  僕の言い方も、良くないとは思っている。誤解を生みやすい言い方を、してしまうみたいだ。  ただ僕からしてみれば、どうしてそんなに自信がないのか理解できない。透真くんは自分を、過小評価しすぎだよ。 ――――こんなにも優しくて魅力的なのに。 「僕はその、口下手だし……思ったことを、そのまま伝えるのが苦手だよ」 「俺だって、苦手だよ。でも律さんの言葉を借りるのなら、人間らしいのかも」  そう言って微笑みながら、僕の顔を覗き込んできた。その時の表情が、いつものことながら綺麗だった。  僕は途端に恥ずかしくなって、思わず目を逸らしてしまう。でも優しく抱き寄せられて、顔が近づいてきた。  静かに目を閉じると、優しく触れるだけのキスをしてきた。目をそっと開けると、優しく僕を愛おしそうに見つめていた。 「律さん、好きだよ」 「ぼ……くも」 「え? ちゃんと言ってよ」  イタズラに微笑む彼が、少し小悪魔に見えた。それでも嬉しそうにしていて、もう少し勇気を出してみようと思った。 「うっ……口下手でもいいって」 「今は言ってほしい」 「す……き……んっ」  僕が想いを告げると、今度は舌を入れてきた。いつものことながら、彼のペースに合わせるしかなかった。  口を離すと僕らの口から、銀色の糸が見えた。彼の匂いが急激に強くなって、部屋全体に広がる。  メガネを外されて、テーブルに置かれた。視界がぼやあとしてしまうけど、それでも彼がいるから安心出来る。  彼のキスは気持ちよくて、体の力が抜けていってしまう。僕は彼の首に腕を回して、彼は僕の体を支えてくれていた。  ソファにもたれかけると、服越しに胸を揉まれた。首筋にもキスをされて、変な声が出てしまう。 「んっ……」 「律さん、気持ちいい?」  僕が静かに頷くと、今度は服を上に持ち上げられた。胸元にキスをしたままで、器用に下着を外された。  左胸を舐めながら、右胸を摘んだりこねたりしていた。僕は彼の方に手を置いて、必死に唇を噛んで声を我慢していた。 「服噛んで」 「んっ……あっ……」  彼に言われるがままに、服を噛んで上に上げていた。こんなこと、どこで学んだのだろうか。  回数を重ねるごとに、彼のスキルが上がっているような気がする。比べる対象がいないから、よく分かんないけども。 「集中して」
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