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碧の父、鉄彦が昨日から家に帰らない。
「ごめんなさい」
碧は小さく口にした。
「お父さんは、僕のこと大切?」
数日前、碧は父にこんな質問をした。
「当たり前だろう。大切だよ」
そう言って頭を撫でてくれた父を、碧は信じたかった。
でもやっぱり。
「嘘だったんだね」
鉄彦の最初の妻は空を産んですぐに亡くなっていて、碧は再婚相手が連れてきた子供だった。
再婚相手である碧の母も、四年前に家を出て行ったきり帰ってこない。
(お父さんはお兄ちゃんの方が好きなんだ)
お兄ちゃんは鬼に連れていかれたんだよ。
近所の大人たちに、急にそう言われたことを思い出す。
そうだ。
「これでお父さんも、お兄ちゃんのところへ行けるね」
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