合唱曲の選定 ――インストゥルメンタルの逆襲――

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 続いて、BくんとCさんが手を挙げた。 「はい、Bくん」 「僕はYMOの『LIGHT IN DARKNESS』がいいです」  YMOの『LIGHT IN DARKNESS』! これもインストゥルメンタル! YMOの曲なら『君に、胸キュン。』あたりか、あるいは『LIGHT IN DARKNESS』と同じ『テクノデリック』に収録されている曲なら、『体操』とか『手掛かり』あたりにして欲しかった。  私はAくんの時と同じように却下した。 「では、Cさんどうぞ」 「わたしはヤニーの『PATHS ON WATER』がいいでーす!」 『PATHS ON WATER』ね。幻想的で美しく、それでいてリズミカルな、いい曲だよね。でも、これも歌がないの。ごめんね。  これも却下した。 「はあ……」  私は思わず、ため息をついてしまった。 「みなさん、コンクールで歌う曲を選んでいるのですから、歌える曲にしてくださいね」  私がそう言ってからほどなくしてDくんが挙手した。 「はい」 「では、Dくん」 「ソーサリアンの『屋上』」  ゲームミュージック。ドラムスでリズムを刻みつつ、鐘の音を鳴らしている曲。  ……ドラムスとか鐘とかいっても、実際にはパソコンの音だけど。  この曲、歌どころか、メロディらしいメロディすらない。ソーサリアンの曲なら、アレンジして歌詞を付けて、超有名バラドルが歌っていたやつとかあるでしょ! どうしてそういうのにしないの!  却下。 「はい!」 「Eくん」 「タンジェリン・ドリームの『ルビコン』はどうっすか?」  パート・ワンとパート・ツーがある。どちらのことを言っているのかしら? というか、それ以前にどちらも十七分超え! 規定では演奏開始から終了まで八分以内となっているから、収まらない! さらにそれ以前に、これも歌がない!  却下! 却下、却下!  ……どんどんひどくなっている気がする。
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