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「お前ら、歌いたい曲なんてあるか?」
「ないな。そんなもん」
「わたしも、そんなのないわよ」
ここの子たちは、歌が嫌いなのだろうか?
音楽の授業の時は、嫌々歌っていたのだろうか?
だとしたら、音楽という文字が示す通りになっていないではないか。
音楽を文字通りのものにする。
まさか、こういうところで音楽が難しいものだとは思わなかった。
歌を歌ったり、楽器を演奏したり、曲を作ったりしている時、すなわち音楽をやっている時には、考えたことがなかった。
「歌のある曲か……あっ! 心当たりがあるぞ! 先生!」
Gくんが手を挙げた。心当たりがあるということは、歌える曲を知っているのかしら。
「ファイナルファンタジーVIIの『片翼の天使』は、どうでしょうか!?」
ファイナルファンタジーVIIの『片翼の天使』。これもゲームミュージックだけど、なんと、ゲーム中で使われている曲であるにもかかわらず、歌詞が付いている。ただ、日本語ではなく、外国語だから、歌うのが難しいかもしれない。とはいえ、やっと歌える曲がきた!
「わたし、その曲きらーい!」
Cさんが口走った。せっかく、希望がわいてきたと思ったのに……
「どうしてですか? Cさん」
「あの曲聴くと、元タレントの犯罪者の顔が頭の中に浮かんできます。だから、きらいです」
そっち!? 女の子を刺殺した悪役を思い出すから、じゃなくて!?
「あたしも嫌いだわ。だって、あの人、盗撮しようとしたり、覚醒剤やってたりしたんでしょ? だから、あの人のイメージソングと化している曲は嫌い」
Fさんがそう言うと、クラス中の女子が「わたしも」「あたしも」と言った。
どうやら、これもだめそうだ。なぜか、女子からことごとく嫌われている。元々、そんな曲ではないのに、誰かがこの曲をあいつと結び付けた。それが生徒たちに影響を与えている。
元はといえば……
あいつが罪を犯すからいけないのよ!
変なおじさんの真似事なんて、フィクションの中だけにしておけばいいのよ!
それと、覚醒剤はダメ! 絶対!
ついでに、麻薬や危険ドラッグ等もダメ!
「……はあ」
また、ため息が出てしまった。
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