1編「転校」——カースト上位のド執着攻め×才能を潰された強がりセッター——

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 あれから程なくして阿良々木の家にお邪魔したが、これは些か展開が急過ぎると言わざるを得ない。 「んちゅ……んっ、ぢゅるぢゅる、んはっ……ちゅく、ちゅぅぅ……」  どちらが口を吸い、どちらが今、それを受け入れて絡め取っているのかわらかない。  強いて言うなら、阿良々木の方が経験値が高いのか、やたらと舌を吸ったり歯列をなぞったりと、手数が多いのが多少引っかかるくらいだ。  互いの唇から糸を垂らしながら「受け身でも良かったのに」と阿良々木はいう。 「ふっ、そこも受け身なんて俺こそ申し訳ない」 「へぇ、申し訳ないでキスしてくれるんだ?」 「あ、いや……そういうわけじゃないけど」  まごつく俺をよそにベッドに押し倒した手でシャツを脱がす阿良々木。  咄嗟に引き止める俺に「何で止める? 俺、十分アピールしたつもりだけど」と有無を言わせないような鋭い目で見る。 「それに、さっき俺の部屋に来るって言ったじゃん。つまり、覚悟決まったってことだろ?」 「いやぁ……多分そうじゃないかとは思ってたけど、今日とは思わなかったっつうか……」 「ふーん、ま、進めるけどね」 「えっ、ここは引いてくれるとこじゃ?!」 「覚悟はしてたんだろ? だったら今日も明日も同じことだ」  そう言って脱がしたシャツを投げ、「泣いて縋るまで帰さねぇから」と雄の顔で俺を唆す。  だが、俺にしてみれば初めから全身で阿良々木に凭れかかっているというのに、何を今更縋ってくるのを望むのだろうか。  今にもとって食いそうな眼で俺を見下ろして、首に思いきり噛みつかれる。  痛いが心地いい。そう思った矢先、阿良々木は噛んだままぎりぎりとすり潰すように歯を立てた。  思わず声を出す俺と、その声に興奮する阿良々木。 「痛くて涙出そうか」 「な、泣かねぇって。つか、加減してくれよ」 「悪い」  「それは無理だ」阿良々木はニタリと笑った。  その言葉を皮切りに、完全に服を剥かれ、被った陰茎までもしっかりと頭が拝めるほど剥かれ、心の奥まで剥かれた気分になる。  転校してたった1ヶ月の間でこんなにも気を許す相手ができるなんて夢にも思わなかっただけに、多少乱雑に剥ぎ取られたくらいどうってことなかった。 「渉さ、こっちに来る前部活とかやってたか?」 「へ?」 「華奢な割に結構筋肉ついてるから」  阿良々木は指の腹で俺の腹筋をなぞる。割れた筋肉がそこまで意外だったのだろうか。 「別に筋トレくらいするだろ。そういう阿良々木だって、してるんだろ。見せてよ」  俺の回答に納得いかなかったのか、返事はせず黙って阿良々木も脱ぎ始める。  脱ぐ姿すらカッコイイ。これに尽きた。 「俺は渉みたいな鍛え方はしてないと思うから、やっぱり筋肉のつき方が違うな」 「そりゃそうだろ、こんなカッコイイ胸板、俺には到底追いつけないわ」 「フッ、そうかもな」 「おい、少しは謙遜しろよ」  「だって、これは勝手についた副産物みてぇなもんだしな」とさらに遠慮のないぶっこみをしても清々しささえ感じるのは阿良々木くらいだ。 「渉、いい加減こっちに集中しろ」 「ご、ごめ——んんっ」  最後まで言い切るのを待たずにまた口を吸われる。  今度は興奮しっぱなしの陰茎を扱き、我慢で溢れた汁の粘着音が大きくなる度に阿良々木の機嫌も良くなる。 「んぁ……あっ、阿良々木……手ぇ、強い……あっ、んっ」 「んー? その方がイイ音聞けるからやめねぇよ?」 「んぅ、そんな……」  追い詰められ快感を拾うことに集中し出した俺は、次第に自分が立てている音さえ興奮材料にしてしまっている。  存外、俺は快感に弱いらしかった。 「にしても最近抜いてなかったのか? 先走り出るの早いんじゃね?」    「これじゃあイくのもすぐだな」と阿良々木は鈴口を指先でくりくりと撫で回しながら余裕綽々にいう。  これには俺も、失礼だな、くらい言ってやりたいのに出たのは漏れる喘ぎ声だけ。    この調子ではすぐに絶頂まで上り詰めて、1ラウンドが終わってしまう。  そう考えたら、今日は帰れなくてもいい——なんて言ってしまいそうになった。
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