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「ぅあ……んんっ、はぁ、はぁ……阿良々木……阿良々木……」
「まだダメだ」
「阿良々木ぃ……!」
「唆る顔してもダメだ」
「っ、何で……! 俺、もうすげ……んっ、我慢した……!」
「じゃあ何か言うことあるだろ?」
「う……」
流石に、イかせてくれ、なんて男が男に言うのは気が引ける。だが、それを全くよしとしないのが阿良々木だ。
絶頂寸前で腰が浮いても、痙攣して我慢の限界でも、鈴口を塞いで根元まで締めてくる。
「どうした。何か言いたいか?」
「……男にそんなこと言われて……興奮するか?」
「もちろん、渉だからな」
そんなことを言われてしまえばもう、後の祭りだ。
羞恥心や変なプライドで堰き止めていた欲が止め処なく流れていく。
「阿良々木、阿良々木、もう何でもいいから……もっと触って……イきたい」
すると阿良々木は満足そうに無言で止めていた手を動かし、簡単に俺を頂上まで登らせてしまった。散々焦らされたせいで残尿感に似た不快感まで襲ってくる。
俺は息も絶え絶えに、次は自分がとばかりに阿良々木のパンツに手を伸ばしたが、「渉は無理しなくていい」とやんわり制止される。
「俺、無理してるように見えた……?」
「フッ、そんな不安そうな顔すんなよ」と俺の欲しい言葉に胸を撫で下ろして、今度は阿良々木の背中に手を伸ばす。
「じゃあ、これならいいよな?」
「ふぅ……一応渉から縋ってくれたし今日は勘弁してやろうと思ってたんだけど?」
「え、最後までしないのか?」
「ほぉ、覚悟が決まったのかそれとも無知なのかどっちだ?」
「解せば入るだろ?」
ローションなかったらきついけど、と俺が続けると阿良々木は「カハッ、無知の方だったか」と乾いた笑みを溢す。
「言っとくけど、10分や20分解して挿入れたって多分無理だぞ。あと腹ん中全部出さねぇと」
「マジか」
「部活をやってたなら尚更な」
「……なぁ、さっきから部活部活って阿良々木は俺の何を知ってる?」
今日はやたらと俺の神経を尖らせるような言い方をしてくるので、普段なら絶対にスルーすることをあえて聞く。
「いや? 何も」
「そっか」
「ただ、いい加減ここに来る前のことも俺には話せるだろ、とは思ってるけど」
「……まだ話したくない、って言ったら阿良々木は……俺のこと嫌いになる?」
「悪い」と言いながら俺の頬を優しく撫でる阿良々木を見て、俺はようやく背中に回す手が無意識に固く握りしめていたことを気付かされた。
「親の転勤だけが転校の理由じゃねぇもんな」
そういって俺から出た白濁を拭き取り、寝転ぶ阿良々木。
(あと少ししたら帰されるんかな……)
「なぁ、今日阿良々木の家に泊まってもいい?」
最後までできる自信はなくなったけど、と弱々しい語気で阿良々木に強請ると「ああ」とだけ返事をする。
その時、俺は初めて阿良々木に ”柔和” という表現がしっくりくる表情をしていると感じた。
(今までだって優しい言動はたくさんあったはずなのに)
「どうした?」
「あ、ああ、何でもない」
「何だ、言えよ」
「だから何でもないって」
「言え。俺に隠し事をするな」
「——っ、本当に今、優しい顔をしたなって思っただけ! ったく、最近イメチェンしてから遠慮がなくなってきたよなっ」
そう、阿良々木の素顔はこれではない。
素顔はもっと——。
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