秋風の約束

偶然の出会い

第1章

東京の秋は、空気が澄んでいる分、どこか切ない雰囲気が漂う。青空に金色に染まる銀杏の葉が、ひらひらと舞い落ちる街並みの中で、橘由紀はいつものようにコーヒーショップで過ごしていた。彼女の一日は、仕事帰りに寄るこのカフェでほっと一息つくことから始まる。今日は、特に忙しく、疲れが溜まっていた。

店内には、穏やかなジャズが流れていた。由紀はテーブルに座り、窓の外の景色をぼんやりと眺めていた。その時、カフェの扉が開き、ドアのベルが鳴った。入ってきたのは、少し派手な赤いジャケットを着た男性だった。彼の目には、どこか謎めいた輝きがあった。

彼がカウンターで注文をしている姿を見て、由紀は不意に目が合った。彼は軽く微笑んで、由紀のテーブルに近づいてきた。

「こんにちは、ここ、空いてますか？」

由紀は驚きながらも、頷いた。「はい、どうぞ。」

彼は一礼して、由紀の向かいに座った。彼の名前は、高橋竜二。彼はフリーランスのグラフィックデザイナーで、仕事の合間にこのカフェによく来るという。由紀と竜二は、すぐに打ち解け、自然に会話が弾んだ。