怪談七伸び不思議

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一週間後。 頭に巻いていた包帯も取れて。階段から足を踏み外して頭を打った後遺症もなく。 以前と変わらぬ普通の日常と学校生活を過ごしていた。 今日は学校が終わってから友達とラーメン屋に行く約束をしていた。しかし、掃除当番に当たっていて俺を置いて、皆は先に駅前に向かっていた。 「あーもうっ。皆薄情だよなぁ。先に行くなんて。俺が病院に運ばれたときは、大騒ぎになっていたらしいのに」 しかも何人かは勘違いして、俺が死んだと思って大泣きしてくれたらしい。 ふっと笑いながら、まだまだ明るい日が差し込む廊下をパタパタと走り、下駄箱を目指す。 「そう簡単に死んでたまるかっ。今日は俺の快気祝いでラーメンを奢って貰えるんだからなっ」 大盛り。味付き卵も頼んでいいと許可は降りている。 ソワソワしながら足を進めた先に。 鏡がある。あの踊り場がでて来て。慌ててきゅっと足を止めて、お行儀良くそろそろと。階段を降りる。間違っても三段跳びで降りることはしない。 踊り場に辿り着き。 鏡をちらっと見るが薄紫に光っている──と言うことはなく。明るい光を受けて俺を映し出し。 虚像をたたえていた。 その鏡にそっと指先を伸ばす。 「あれが夢か現実かは俺には分からない。けど、うん。階段はゆっくりと降りるようにするよ。そうだ、あと校長先生、来年には他校に移動するらしい。まぁ、俺もその時は卒業してるけどな」 でも何かあったらまたよろしく。と、胸中で告げて伸ばした手を引っ込めて。 その場をさっと後にすると。 後ろでくすりと、あの優等生が苦笑する声が聞こえた気がしたけれども。 俺は振り返ることは無かった。 きっとあの優等生は、俺が困っていたらまた手を伸ばしてくれると。 なんとなく、そう思ったからだった。
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