*《愛している》

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*《愛している》

 獣は姫を貪るように食していく。だがそれは残酷なものではない。  姫の服も下着もなにもかも剝いでいき、全身を弄るようなキスを送り、囚われていた姫……いや、美青年は甘美な声を上げて獣の騎士の愛撫を受け取るのだ。 「あぅ……んぅ……んぅ……、そこ……」 「ここが良いのか?」  淡いピンク色の蕾はピンと立てられて舐めるたびに甘露な声を上げてしまう。愛しい獣の騎士から送られる優しいキスは、美青年を欲情させていく。 「もっと、触って……? お、ねがい……」 「ははっ。お前のここも可愛く反応しているぜ?」  騎士は……双葉はそりたっている鏡梨の局部をべろりと舐め上げた。甲高い声を上げ「もっと舐めて……」などと切なげに願えば、双葉は淫らだが完熟した液を含ませて扱いていく。  上下に扱い喉元を開かせれば鏡梨は仰け反って声を上げる。 「あぅ……ひぃっう……イ、く!」 「ひひぜ、イケよ?」  すべてを飲み干した双葉は白濁液さえも飲み干し鏡梨を味わう。  ――次はここだ。  いったんベッドから離れローションを後ろの蕾へたらふく飲ませ、指まで飲ませた。鏡梨の息が詰まっていく声を上げていたので促せるように深いキスをし掻き乱す。 「あぅ……ふぅん……――んぅ……」 「んぅ……、キスに集中してろよ。――鏡梨」  指を侵入させてから解し終え――自身を充てがった。鏡梨は息を詰まらせ嬌声を上げて涙を零し受け入れる。  双葉は眉間に皺を寄せながら進めていき、奥へ奥へと入り込んでいく。  すべてが埋まったかと思えば、今度は引き抜くように律動を開始した。 「あぅ! ふぁっ……あっ、あぅっ!」  涙を舐め取り対面で抱き締めた双葉は「俺色に染めてやるからさ」そう告げて再び深いキスを送る。  熱い抱擁と熱いキスに酔いしれて鏡梨は達してしまい双葉の腹部へ薄い白濁液を放出した。  だが双葉も動くさなかで鏡梨の味に酔いしれて達することができた。  二人は蛇のような密度の高いキスと性行為を何度も繰り返し……夜が明けたのだ。 「いたい」 「はいはい」 「お前、見舞いに来なかったくせにセックスしすぎなんだよ。腰が痛いんだよ」 「だからごめんってば。悪かったって」  腰を揉まれている鏡梨は悪態を吐いて双葉に奉仕をさせていた。だが本当に動けぬほど密度の高いセックスをされたおかげで、身体がまともに動かない。  まるで野獣のような行為に鏡梨は悶えて喘ぐことしかできずにいたのだ。気持ちは 良かったがここまで動けないと後悔まで抱く。  水を取りに行くのでさえも、トイレに行くのでさえも双葉に介助されないと動けないのだ。 「双葉の馬鹿、アホ、ドスケベ」 「そんな罵倒しなくても良いじゃねぇか、揉んでやってんのによ」 「これじゃあ銭湯業務できないじゃん。あ……」 (周さんどうなったんだろう?)  ふと丸々太った悪人の顔つきをした周の姿を思い出し心配をした。周は銭湯の常連であったし池田組に関わっている。  池田組が今、問題を起こしているのだから周も無事では済まないだろう。そう思うと下ネタをさんざん言われてきたが気の毒さも感じてしまう。  恐喝もされたが大事な客の一人だ。こんな形で失ってしまうのは釈然としない。 「なにで悩んでいるかは知らねぇけど大丈夫だよ。客なんてまた戻ってくる。――罪を償えばまた戻れるさ」 「……なんで思っていることわかったんだよ?」 「お前を俺色に染めたからって言ったら、変か?」  「変だわ馬鹿」なんて言ってご奉仕をしてもらった。太い息を漏らす双葉ではあったが「そういえば……」そう言って話を続けた。 「お前が書いたリリック通ったぞ。昨日はそれで見舞いに行けなかったんだ。プロデューサーがかなり心配していたぞ?」 「へぇ~あの人も心配するんだ。なんか意外」  また不謹慎なことを言ってはマッサージの気持ち良さに眠ってしまいそうになる。眠いなと思いながらうつ伏せになっていると、双葉がマッサージを中断してしまうではないか。  いきなり中断されたので軋む身体を起こして怒ろうとすれば――唇を塞がれる。何度も口づけを交わしたおかげで腫れぼったくなった唇をべろりと舐め上げられて、対面した形になった。 「もう奉仕したから良いだろう? 今度はお前の番」  抱き締められた状態でベッドに寝転び補充された鏡梨はトイレに行きたくても行けずにいたのだ。  一週間後、ヤッテやら騎士(ナイト)のレコーディングが行われた。  双葉の働きのおかげでプロデューサーに話が通り以前、鏡梨が曲と共にレコーディングをしたソフトを用いて双葉が想像し歌い上げるというものであった。  双葉がレコーディング室へ入った時、プロデューサーが「カガリ、大丈夫だったのか?」そう尋ねてきたのだ。  呆気に取られたものの、鏡梨は「ご心配をおかけしました」と頭を下げて謝罪をした。プロデューサーがすまなそうな顔をした。 「謝って欲しいわけじゃないんだ。ただかなり心配はした。……お前は、いや――お前たちにはかなり期待をしている」 「……そうですか」  まさか褒められるとは思わずにぽかんとしているとプロデューサーは双葉に視線を向けた。双葉はヘッドホンを掛けて準備万端な様子である。  オッケーサインを送り、曲を掛けて歌い上げたのだ。  その大胆で抱擁さを保つその歌声に、フローとヴァースが決まったラップは大人びた色調のなかに憂いさを伴わせ、切なさままで募らせる。  だが歌詞の中に『引き裂かれない』『心は離れない』『脳裏に焼き付くこの鼓動』などのフローが決まり、最終的には『きっとあなたに染まるほど』そう締めくくられて曲は終わった。 「す……げぇ」  双葉のバラード調のラップは鏡梨を驚かせ、プロデューサーは満足そうに微笑んだのだ。
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