25 後宮事件簿⑥

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25 後宮事件簿⑥

「まず、お財布が盗まれたという事ですが…」 「えぇ、その通りです。 付け加える所は何もありません。 財布が寝ている間に盗られた、それだけです。はい。」 ローズリート様は言う。 「事件は昼の1時頃と伺っていますが… 相違ありませんか?」 私はさらに尋ねた。 「いえ、眠りについたのが、昼の1時頃。 起きたのが約1時間後の昼の2時ですから、その間に盗られたのだと思いますよ?」 「なるほど… 犯人に心当たりはございますか?」 「さぁ、僕を恨む女性ならば、星の数ほど居ると思いますが、それならば刺されているはずですからねぇ。 財布を盗るという事は金目当てでしょうから… そうなると、みんなに動機がある気がしますが…」 ローズリート様はおっしゃる。 まぁ的を得た意見にも思える。 「シャルナーク様、その1時から2時の間に庭に出た姫君や女官などを特定できますか?」 「今のところ分かっているのは3人だな。 女官のプレシア、姫のサルバ、侍女のターニャ。 それ以外にも居ったかもしれんが、目撃情報があるのは、この3人だ。 あぁ、それから、財布の発見者ミーナもおるな。」 シャルナーク様はおっしゃる。 「財布の発見者? では、財布は見つかったのですね?」 「あぁ、金を盗られた状態で、だがな。 ミーナの話では、庭の隅に落ちていたらしい。」 「では…まずは、女官のプレシアから事情を聞きましょうか?」 そして、女官をホールに呼び出した。 「わ、わ、私はやっていませんわよぉ!」 女官のプレシアは来るなり、そう言った。 「落ち着いてください。 犯人と決めつけている訳ではありません。 ローズリート様に近づく怪しい者など、見ていませんか?」 「そんな私はただ私付きの姫様の髪飾りを探していただけで…」 「髪飾り? 落とされたのですか?」 「え、えぇ。 無事に見つかりましたけれど… 下ばかり向いていましたから、誰が居たかなんて…」 プレシアは言う。 「分かりました。 ありがとうございました。」 次は姫君のサルバ様が来られた。 「あのね、私は栄誉あるシャントス侯爵家からこの後宮に入りましたのよ? そんな金貨10枚の為に盗みを働くとでも?」 サルバ様はおっしゃる。 まぁ、それもそうかもしれないが… 「全員に聞いて居ることですので… 庭で怪しい人などは見かけませんでしたか?」 「いいえ? 気がつきませんでしたけど。 大体あの女好きのローズリートなんていい気味だわ。」 「女好きだからと言ってお金を盗っていい訳ではございませんよ。」 私はやんわりとそう言ってサルバ様にお礼を言った。
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