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加納大全(かのうたいぜん)でございます・・・やせた男が言った。
近藤十三(こんどうじゆうそう)・・・厳つい男の物言いは、ぶっきらぼうだった。
「鬼木、どう言う組み合わせだ。」
「加納殿には桜井殿、近藤殿には細貝・・この組み合わせで・・」
「どの対戦が先だ。」
中御門経衡は異様に興奮して見えた。
「加納殿、準備は宜しいか。」
その声に小柄でやせた男が立ち上がった。
相対するのはこれもそれ程風采のあがらぬ男、桜井嘉一(さくらいかいち)。
二人は蹲踞の姿勢から立ち上がり、間合いを取った。
へっ、面白くもない・・・市之丞はその様子を庭の石に腰を掛け、後ろ手に身体を伸ばして見ていた。
その横でぎりっと歯噛みの音がした。
「おいおい、その気になっているのか。」
市之丞は主水の介の顔を覗き込んだ。
勝負はなかなかつかず、「それまで。」との元治の声が響いた。
「左内、面白いのう・・・」
経衡は隣に座る自分の股肱の顔を見た。
さようで・・・左内は短く応えただけだった。
次の手合わせは、近藤十三という角張った身体の男と、ひょろりと背の高い細貝恭平(ほそがいきようへい)であった。
俺の相手は若造か・・・近藤はニヤリと笑った。
蹲踞から立ち会うと同時に近藤は打って出た。
それを恭平が捌き、木刀で受ける。
それにも構わず、近藤は木刀の上から打ち続けた。
その圧力に恭平の膝が折れた。
「力をつけろ。」
そう言って近藤は後ろを向いた。
それまで・・・元治は声を上げた。
「左内、元治。
あの二人、どう見た。」
経衡は二人に声を掛けた。
「二人ともなかなかの手練れと見ました。
特にあとからの男。」
「あの、近藤十三(こんどうじゆうそう)と言う男、統率力もあるやも知れません。」
鬼木元治、奥村左内の声に経衡はそれぞれ頷いた。
「鬼木、市之丞に声を掛けよ。
昨日行けなかった町道場へ行く。」
「推挙したのは拙者・・拙者も同行いたします。」
奥村左内も立ち上がった。
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