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涙ながらに語ったところによると、息子が家に帰ってこない、高校にも行かない、繁華街で良くない仲間とつるんでいるようだ、何度も警察に補導されている、親の言うことをまったく聞かない、と。
よくある話すぎて堺は笑いそうになってしまった。それに相手の女性はかなり盛大な勘違いをしている。だが、気がついていないようだった。
ふんふんと黙って話を聞いていた堺を彼女は自分の味方になってくれると理解したらしい。息子の携帯電話の番号を押し付けて慌ただしく帰っていった。
安西俊、と書かれたメモ用紙。
それを眺めて、堺はなぜか携帯電話を取る気になったのだ。
堺はゆっくりと会話を重ねていった。
「それで、君はいろいろ不満なんだね」
「おーよ。もう…ダルくてさ」
大して飲んでもないのにろれつが回らない。耳まで赤くなった少年はソファーの上に半分倒れかかっている。グラス二杯ほど。上等なブランデーを奢りながら、堺は質問を繰り返した。
「ダルい?」
「…なんか、刺激ないし…つまんないし…」
「で? 相手は?」
一瞬、俊はきょとんとした表情を見せたが、また眉をひそめて手を振った。
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