おかあさん 恨みます!

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おかあさん 恨みます!

 ドカッ  ドアを蹴飛ばす音も荒々しく入ってきたのは、案に反して細身の少年だった。ここはとあるビルの狭い貸会議室の一室だ。 「あんた? 堺ってのは」  どこか小馬鹿にしたように自分を見下した少年に、堺は年の功でにっこりと笑ってみせた。強面こわもての顔の印象がいささか和らぐ。それが気に入らなかったらしい。少年はムッと表情を歪めた。 「おっさん! あのババアが何を言ったが知らねえけど、俺は好きでやってんの。カウンセリングなんて要らねえから」  険しい顔でまくし立てる白い顔。鼻筋の通ったなかなかの美形だ。アースカラーのカーゴパンツの上は白く短いシャツ、その上にはカーキ色の上着。髪は明るいアッシュで、首元から極細いレディースの金鎖が覗く。真冬だというのに軽装だ。確かに、どこかいかがわしい街裏でたむろする若者を連想させた。  ふむ、と堺は首を捻った。  カウンセリングは堺の趣味のひとつだ。大体、得体も知れないカウンセラーに頼ろうなんてもの好きは滅多にいない。ひと月にひとり、声がかかればいい方だ。けれど、こんな雑多な関りから人の心の奥底が見えたりするものだ。
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