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お誕生日にクリスマス、ひな祭りに七夕、お正月やハロウィンなどなど。
いくつもの行事を学んできた我が家の娘のミナちゃん(五歳)は、今度は四月一日に何となーく行われている、行事ともいえないイベントごとが存在するということに気付きはじめたようだった。
「ねぇママ、えいぷる……ふー? ってなぁに?」
幼稚園へのお迎えを済ませた夕飯の買い物の帰り道、手を繋いで隣を歩く娘が訊いてきた。私は一瞬詰まってから、素知らぬ笑顔でいったん誤魔化した。
いったいどこで覚えてきちゃったのかなぁ、そんなイベントごと。
実は明日が四月一日、娘の関心の対象である「エイプリルフール」である。
何て説明しようか。
常日頃から「嘘をついたりしてはいけません」と教えている親の身としては、「嘘をついてもいい日がある」というのは、普段の教えから考えるとあまりに矛盾に満ちていはしないだろうか。
「うーん……そうだなぁ」
親としての最適解を導き出すべく考え、悩む。もし明日、エイプリルフールを知っているお友達に何か嘘をつかれて「お友達にだまされた!」なんてショックを受けるようなことがあってもいけない。
まずは家庭で「楽しい嘘ならついても良い」というワンクッションをもうけるというのはどうだろう。
そうして午後になったら嘘を明かし(大きなショックを与えない嘘にするつもりだ)、こう言おう。
――エイプリルフールはちょっとした嘘なら吐いてもいい日。楽しい嘘だけ。
誰かを傷つけたり悲しませたりする嘘は駄目よ、だけどよく知らないお友達はそういう嘘をついてしまうかもしれないから、そんな時は赦してあげてね――と。
よし、それでいこう。
「エイプリルフールっていうのはね、ほんのちょっぴり、楽しい日のことよ」
「たのしいの?」
誰も傷つけることのない他愛のない嘘を考えるのは、楽しいことでもあるのには違いない。
「そうよ。明日になったらわかるからね」
「えいぷるってあしたなの!?」
楽しいこと、の言葉にワクワクが湧いてきたようで、娘はぴょんぴょんと飛び跳ねた。
「あっ、でもそんなに期待はしないでほしいなー、なんて……」
と呟いてももうひとり言にしかならない。私と手を繋いだまま、娘はスキップをはじめてしまったのだった。
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