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「これも何かの縁だし。占ってあげましょうか?」
「え、でも」
「お金はいらないわよ」
「見目麗しい女性が二人。眼福ですなあ」
男の言葉に輝夜は俯く。その様子が面白かったらしく、夕顔は頬杖をついた。
「あなた、もう雰囲気から自分に自信がなさそうなのよね。おおかた綺麗な事で女の嫉妬を受けて嫌な人生だったってところ?」
「わかるんですか」
「そりゃ私だって同じ目にあってきてるわ。でもね、ウジウジしないで堂々とすると誰も寄ってこなくなるのよ。隙を見せるから調子に乗るだけ。ブスと違って私はきれいだからね、って真正面から言えばいいの。裏でこそこそ言ってても、直接言ってこないなら意味ないんだから」
母と同じことを言う。しかしとびきりの美人の夕顔に言われては、説得力も違う。
「占いは別に超能力じゃないわ。カウンセラーみたいなものよ。悩んでいるのならアドバイスをあげるだけ。さもお告げを得たかのように相手が信じたらこっちの勝ち」
占い師本人がそれを言うのか、と呆気に取られてしまう。そうなると、自分の夢は悩み相談をして解決できるものではないと思ってしまい。解決できるのならしてみてよ、と珍しく反抗心が出てきた。
「じゃあまずは聞いてください。そして占い結果を教えてくれますか」
「どうぞ?」
余裕の表情の夕顔。夢の話をすると、彼女は笑みを消した。美人なだけに真顔は迫力がある。
「さっきのカウンセラー、っていうのは一回忘れて。ちょっと変な話になるけど、ちゃんと聞いてね」
「え? あ、はい」
「その蔓、葛に間違いないのよね?」
「はい」
「……驚いた。まさかここまで同じとは」
「え?」
「私もまったく同じことがあったの」
気持ちはわかるとか、同じ経験があるとか。あなたと寄り添っていますよ、というのはカウンセリングの基本だ。睡眠外来でもよく言われる。だからお約束パターンかと思ったのだが。
「あなた、この町にきて一人暮らし始めてから蔓の夢見るんじゃない?」
「え、あ、そう、かも」
「ここはね、カヤノヒメ……日本神話の草の神様が住んでいたという伝承があるの。ここでは植物が良く育つといわれているわ。私もここに来て蔓が私目がけてのびてくる夢をよく見た。たからこう結論づけたの。嫉妬の象徴が蔓になってるってね」
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