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吐しゃ物を処理して、ふらふらと外に出る。門の外に出れば、蔓が伸びて来る。よく見れば近隣の葛はすべて屋敷に向かってきている。ここに「獲物がいる」とわかっているのだ。あふれる涙が服を濡らす。
その時、そっと頬に布が当たった。驚いてそちらを見ると、藤原がハンカチを出していた。
「え、ふじ、わらさ……」
「使ってください」
お言葉に甘えて、ハンカチで涙を拭う。戸惑って彼の顔を見つめた。てっきり藤原も一緒に出て行ったのかと思ったが。
「私はあの人の部下じゃないです、ただの庭師ですよ」
「そう、なんですか。置いて行かれてしまいましたね……」
涙が止まらない。しかし藤原は軽く笑い飛ばす。
「いいじゃないですか、離れられて」
「え」
「本当はあまり得意なタイプではないのでしょう? ちょっと物の言い方がきついし上から目線だ。たまに彼女の言葉に傷ついてたじゃないですか」
自信がない態度は見てて苛々するからやめて、馬鹿ね。口癖のように馬鹿と言われて、反論できずにいた。
「ストレスの原因が離れてくれたんですから。自分の為にならないものからは、離れるのが一番です」
「はい……」
泣きながらなんとか返事をする。
「まあ、しばらくはネット通販とかで乗り切ってください。生活できるのは事実なんですから」
「ありがとう、ございます」
藤原の言葉に少しだけ持ち直した。少し一人になりたい、と部屋に入る。思い出すとまた泣いてしまったが、ブンブンと頭を振る。
ふと鏡を見ると、陰鬱とした表情の自分が映っている。髪は腰まで伸びていてまるで幽霊だ、不気味すぎる。辛気臭いったらない。
(性格は変えられないけど。見た目なら変えられる)
ふう、と大きく息を吐いて髪すき用のハサミを手に取った。
「おや」
藤原が目を丸くする。部屋から出てきた輝夜は、ショートボブになっていたのだ。自分で切ったせいであちこちガタガタになっている。
「と、とりあえず。見た目から変えるのもありかな、なんて……」
「よく似合います。頭も軽くなったのでは」
「あ、はい。ちょっと上を向きたくなります」
自分で言っていて恥ずかしいが。藤原は馬鹿にする様子もなく穏やかに笑う。
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