葛は姫に絡みたいのです

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 その言葉に、希望がわいて来る。 「安心して引越しできますね」 「いえ、住み続けます。自分を見つめ直すには良い町なのかもしれません」 「奇特な人だ、あっはっは」 「アパートに帰ります。一旦お別れですけどまた来ますね」 「そうですか、わかりました」  小さく笑う。心が温かい。本当に、感謝しかない。  それからアパートに帰り、いろいろと調べたり試した結果。髪が伸びる速度が異様に早い事以外は普通にすごせるようになった。夢は、見なくなった。  相変わらずやっかみも嫉妬も、時には誹謗中傷もある。しかし髪が伸びてくれるおかげで、妬みは髪に行っているということで。それを自分で切るたびに「ざまあみろ、私には届いてないぞ!」と思えるようになった。  少し、明るくなった気がする。ゲームキャラにハマってキーホルダーとぬいぐるみをつけていたら、美人なのにオタクかよと男は寄ってこない。  そして同じゲームが好きな子と仲良くなり、推し活で大盛り上がりをして。気が付いたら、友人が三人もできた。彼女達は女子力は負けん! と、輝夜の見た目を肯定的に見てくれている。その事が嬉しくて藤原に話に行ったのだが。 「え?」  庭の植物は全て枯れていた。隣の家の人に藤原の行き先を知らないか聞いたのだが。 「ええ? ここ、女の人が一人で住んでただけでおじいさんはいませんよ?」  呆然としながら屋敷の前に戻る。ふと、藤原がよく座っていた椅子にメモがあることに気づいた。 『お元気で、かぐや姫』  よくわからないが。きっと、彼は彼で元気にやっていることだろう。胸を張って生きよう、彼が褒めてくれたとおりに。  涙ぐみながらも前を、上を向く。勇気をもらったのだから。
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