いつも嘘をついていると思っていたから

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 俺には、幼稚園ぐらいから家が隣同士の近所にいる、同い年の幼馴染がいる。  彼女はいつも嘘をつく。  毎日1回、必ずだ。  いつからつき始めたのは覚えていないが、大体物心ついたくらいだと思う。 「あ!後ろに誰かいるよ!」 「危ない!下を見て!」 「横に何か飛んでるよ!」  そう言われて指をさされて反射的に見るたびに、「うっそー」と彼女は舌を出して笑う。なんで毎日するのかわからないが、それが日課なのだと言わんばかりに、必ず顔を合わせたらそういった指を指しての嘘をついてくるのだ。  これがまた憎たらしい顔で腹立つ醜い容姿とかだったら絶縁ものであるのだが、俺が知っている中で一番の美少女という素晴らしき容姿の持ち主の為、俺は絶縁というものが出来ないでいる。  小学、中学、高校と同じ場所だったこともあり、自然と登校は一緒になる。  そういう男女というものは付き合っているだのなんだのもてはやされるものだが、残念ながら田舎という言葉が相応しい、子どもの人数がそもそも少ない俺たちが住む町で、俺と彼女が幼馴染というのを知らない者がいない。  そのため、家が隣同士だというのもわかっているからこそ、「ああ今日も一緒に来たんだな」ぐらいの感覚だ。  だからといって、そういった話が全くないわけではない。  というか、俺が大分意識し始めている。  成長するにつれて俺が背が伸びていくとともに、彼女のほっそりとした体は丸みを増し、たまに見かける女性用雑誌に出ている芸能人級に可愛い。腰が細くて、胸もそこそこ。なんというか、男の理想を詰め込んだような容姿をしている。  だから、彼女に毎日嘘をつかれても、一日に1回という決まりでもあるのかというぐらいの程度だし、その嘘に付き合うのも別段気分の悪いものではない。こうして毎日嘘に付き合っているうちにいつかあわよくば、というシーンがもしかするとあるかもしれない。  そんな下心が出てからは、俺は彼女に「あ!後ろ!」みたいな嘘をつかれるたびにわざと「えー、今度はなんだよー!」と色んなリアクションを取るようになっていた。まぁぶっちゃけ、慣れてきたっていうのもあったが。  とはいえ、会わない日は嘘をつかれることはない。  まぁそもそも会っていないのだから、そういうものだ。  だから、会った日は毎日、というのが正解かもしれないが、平日で顔を合わせない日は殆どと言っていいほどないので毎日という言葉は当てはまるだろう。
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